開催概要

このイベントはレクチャーとワークショップの二部に分かれます。レクチャーでは「貴族」、「統治」、「階級」など封建制度をかたどるキーワードを補助線に企画を立てること=立案者の特権性と労働と仕事とその振る舞いについてお話しします。
また、ワークショップでは参加者が考えたアートプロジェクトに関連するコラボレーター/ゲストへの依頼メールを書いてもらいます。
ある日突然、依頼メールが届いたとき、何があらかじめ分かっていたらコラボレーター/ゲストはあなたの考えたアートプロジェクトへの参加に承諾してもらえるのでしょうか?そういったことも考えてもらいます。
現代の日本において、依頼メールは舞踏会の招待状ではありません。メールを送るということは、バチッと依頼メールを送ることは、そのアートプロジェクトの方向性と実現を大きく左右する大事な仕事のひとつです。特権的でありながら働き者でもある、これがアートプロジェクトを「良き統治」へと導くひとつのヒントになるのかもしれません。

講師より

講師の大岩雄典(おおいわゆうすけ)です。美術家です。インスタレーション・アート作品を主に作り、研究もしています。

 インスタレーションの制作とアートプロジェクトの企画とは似ているところも異なるところもありますが、これを「場所」の問題としたのがボリス・グロイスです。グロイスは公共空間と地続きの学芸・キュレーションを公僕の仕事、芸術家の一存でそこに入るものを決められるインスタレーションの画定を主権の行使と捉えました。
 二〇世紀以降の制作論(どこに作るか?)と政治哲学(どこ=国家を作るか?)を重ね合わせるグロイスのアイデアは魅力的ですが、不満もあります。つまり、作ったはいいとして、その続きは?ということです。建国(ステートメント)したとして、統治(ポリティクス)は? または、公共のなかにどう個物として存在する(これもポリティクス)?
 ポリティクスは力の流れを扱う技術です。モンテスキューは貴族制を、一種の整流器のたとえで評価しました。「貴族」の見立てがいまの社会でそのまま使えるわけはありませんが、立場の差はつねにポリティクスの勘所です。インスタレーションで作家が鑑賞者(グロイスは難民に例えます)にたいして特別な立場を免れないように、プロジェクトでも企画者は、その特別な立ち位置をうまく使う技術が要るでしょう。やっぱり場所の問題です。
 通信は場所の編集手段です。インスタレーションを作っていると、メールアートのようだとよく思います。発注、相談、招聘、確認、念押しなど、プロジェクトの輪郭で作用する力のさまざまな発揮が、一見似たようなフォーマットの中で、日本語(僕の場合は)という媒体で個々にデザインされるからです。

こんな人におすすめ
▷アートプロジェクトを自分で企画したい人
▷キュレーションについて考えたい人
▷ワンマンの仕事から幅を広げたい人

開催日時

2025年5月17日(土)18:00 – 20:00
2025年5月25日(日)13:00 – 18:00

参加費

無料

事前要申込

会場

BUG

定員

50名

大岩雄典 プロフィール写真
大岩雄典/Eusuke OIWA

美術家。1993年生まれ。「インスタレーション」を、人間を拘束し上演している現実の装置=法にたいする再現・分析・介入の技術として捉えて美術作品を制作し、その助けとして批評や理論研究やワークショップも行なう。法律、感染症、漫才、カードゲーム、お化け屋敷、ウェブサイト、雀荘など、同時代性と普遍性の両方の射程を基準に、モチーフや形式を縦横に探究する。最新作《killing》(2024)は、日本の刑法とくに決闘罪の規定をもとにした参加型インスタレーションで、統治と近代性、所有と賭博を主題とした。主な展覧会に「渦中のP」(個展/十和田市現代美術館)「Encounters in Parallel」(グループ展/ANB Tokyo)など。直近の寄稿に美術誌「だえん2024」、『ユリイカ』お笑いと批評特集、『現代思想』カフカ特集など。

euskeoiwa.com

実施風景

5月17日(土)

5月25日(日)