開催概要
八木恵梨さんは、言葉にしにくい事柄をイメージとして形づくり、ときには連想ゲームのようにイメージ同士を結び合わせながら、作品へと展開していきます。本展の新作では、「半魚人の手がテーブルを勢いよく叩くこと」や「きゅうりの駒」といったモチーフが鍵となっています。今回は、それらのモチーフを手がかりに、連想ゲームのように八木さんと座談会形式でイメージを広げていきます。そこから生まれる連想は、個人の体験に結びつくかもしれませんし、土地に根付く伝承へとつながるかもしれません。また、身近な現象や社会制度にひもづいていく可能性もあります。
話のきっかけは八木さんが用意しますので、ぜひお気軽にご参加ください。
[アーティストから皆さんへ]
自分は時折、途方もないほど奥行きを感じさせる物事に遭遇することがあるのですが、そういったものと出会ってしまうと、解読欲のようなものが刺激されてしい、連想が止まらなくなってしまいます。しばらく連想をつづけると、脳内が散らかった探偵事務所のようになってしまうので、一旦それらを整理するような意味合いで絵を描いています。1枚のイメージを仕上げる過程で散乱した考えがまとまっていく感じがするのです。その過程の中で、架空のテーブル上にイメージを並べるようなこともしています。イメージ同士の関係を配置で整理しようという狙いです。
少し前から、このようにテーブル上にイメージを並べるという行為をする中で、「誰かがづかづかやってきて、テーブルの上がめちゃくちゃにされたらどうしよう」という妙な恐怖心を抱くようになりました。ある時、そのしょうもない考えに意識をぐっと傾けてみると、半魚人のようなイメージが、「話の通じない他者」として自然と浮かんできたのです。そういうわけで、私は半魚人がテーブルを叩くイメージについて考えるようになりました。
このイメージもまた、さまざまな情報が圧縮されたシンボルのようなもので、紐解いていくと「日本の地方にある人魚伝説と地震との関係」や「ちゃぶ台返しと家父長制」など考えたいテーマがたくさん湧いてきました。
前置きが長くなってしまいましたが、私はそうやって浮かんだものの中で特に「台パン」や「ちゃぶ台返し」について少し考察をしてみていますので、その考察を軸に、テーブルと怒りの関係についてみなさんとお話しできればなと思っています。みなさんとお話しすることで、どういうふうに話が飛躍するのか大変楽しみです。
2026年1月21日(水)19:00 – 20:30
無料
事前要申込

1994年沖縄県宮古島市生まれ。「うまく説明できないけれど、直感ではそれが重要だとわかる」、そんな“暗示めいた事柄”を、イメージを通して解読し、他者に共有しようと試みています。近年は、「怒ってテーブルを叩く半魚人」のイメージを中心に制作しています。
主な展覧会:
2024年 個展「The Half‑Fishman’s Table」Gallery Blue 3143、東京
2023年 個展「TABLE MANNER LIFE, SAVE, AH〜 #8」Ritsuki Fujisaki Gallery、東京
2022年 個展「LIFE, SAVE, AH〜 #6」Token Art Center、東京
主な受賞歴:
2022年 第23回グラフィック「1_WALL」ファイナリスト
イメージはどこまでも広がって
作品は思考の支持体と語り、芋づる式に連なり、広がっていくイメージを作品へと変換する八木恵梨さん。そんな八木さんが関心を寄せている怒りとちゃぶ台返しをテーマに、座談会のようにみんなで語り合うイベントが開催された。
紋切り型のワークショップとは違い、タイトルは内容のおぼろげなイメージのみを伝えるイベントだったが(それも最早バグスクール名物となっているが)、参加者は八木さんのことをよく知る方から偶然参加することになった方まで、様々なバックグラウンドの方が集まった。まず、八木さんが自身の博士論文の内容も反映したマインドマップを使って、テーブルや怒りについての話題提供をしていく。図像が固定されるタブローに対して、テーブルは流動的に変化していく場だそうだ。古今東西のちゃぶ台(テーブル含む)返しを集めた映像に一同が湧く。その話題を受けて、例えば怒りと悲哀の関係や、ちゃぶ台返しと性の関係など、参加者なりの考察を伝え合っていく。性別も年代もバラバラな参加者が集ったからこその、多彩な意見が上がる。そして、話は八木さんの作品にも展開していく。怒りやテーブル、それらに対する考察が八木さんの作品にどのように表現されているのか、参加者からの質問も交えながら話はどんどん盛り上がりを見せていく。最初は遠慮がちだった参加者の方も、次第に積極的に発言するようになっていく様子が印象的だった。
連鎖してどこまでも広がっていく話は、正に八木さんの制作におけるイメージのようだった。八木さんのイメージがどのように作品に繋がったのか聞くと共に、自分でもイメージを膨らませることで、八木さんの作品の豊かさを再確認し、作品をより深く楽しめるようになる時間となった。(本展運営アシスタント:山下港)


