開催概要

坂本森海さんは、陶芸作品そのものを制作するだけでなく、制作過程に関わる土や火、窯、完成した陶芸を器として使う行為、さらにはそれを使う人々や食べ物など、さまざまな側面に目を向けながら作品を展開しています。
本ワークショップでは、近年坂本さんが制作の出発点としているインド北東部・ナガランド州のカレー「ナガカレー」を参加者と一緒につくりながら、ナガランドの文化や、坂本さんの制作の手前にある背景について、参加者と共有します。


開催日時

2026年2月7日(土)18:30-20:30

参加費

1,000円
事前要申込

坂本森海/Kai SAKAMOTO

陶芸家/美術家。1997年生まれ。長崎県出身。2019年旧京都造形芸術大学美術工芸学科総合造形コースを卒業。同年からシェアスタジオ「山中suplex」に在籍。陶芸が内包する、土や火、食べることといった根源的な行為や要素を手がかりに、陶芸や映像、ワークショップなどを使って作品を制作している。

主な展覧会:
2025年 「GO FOR KOGEI 2025 」New An 蔵、富山
2025年 個展「火と土と食べたいもの」京都市京セラ美術館 ザ・トライアングル、京都
2024年 「半井桃水館芸術祭 シャンデリア」半井桃水館、長崎


カレーから広がる歴史、世界、想像
30年前に出版された『ナガランドを探しに』という本。その著者の名は坂本由美子さん。そう、坂本森海さんのお母様だ。「坂本家のカレーと言えば小さい頃からナガカレー」と坂本さんが言うように、坂本さんのルーツとナガランド、そしてナガカレーは深く、強く結び付いており、展示作品のきっかけにもなっている。今回は、そんな坂本さんにとっては重要な、しかしほとんどの日本人にとっては未知のナガカレーをみんなで、作り、食べるプログラムが開催された。
机の上には坂本さんがナガランドから持ち帰った食材の数々。ナガランドの納豆、発酵したタケノコ、発酵した山芋の葉…どれもこれも全く知らないものばかりだ。そして作品にも登場する燻製した豚肉が目の前に積まれており、興奮を覚える。作るのは、ナガランドの唐辛子を使ったスパイシーなカレー、ナガランドの納豆や発酵タケノコを使った発酵の風味豊かなカレー、そして日本で手に入る食材だけで後者を再現したカレーの3種類。味付けは塩と少しのナンプラーぐらいとシンプルだ。坂本さんが手際良く作りながら、ナガランドと坂本家にまつわる話を聞かせてくれる。ナガランドの歴史と坂本家の歴史が重なり、これまで未知だったナガランドという場所が鮮やかに心に刻まれていく。そして程なくしてカレーが完成すると、みんなで実食となった。味は、どこか懐かしい。あんなにも未知の食材だらけだったのに、料理になると、不思議な親近感が生まれている。なるほど、発酵を大事にするナガランドの食事は和食に近いと坂本さんが言っていた訳がここで初めて分かった。日本で手に入る食材で作った方も遜色ない味だ。
バグスクール2025の中で、坂本さんの話を聞く機会は他にもあったが、作品にも登場するナガカレーを味わいながら聞く解説はリアリティが全く違った。このストーリーはフィクションなんかではなく、ナガランドと坂本さんのリアルなんだと、体で感じることができた。このプログラムの前後で、参加者は全く異なる坂本さんの作品の鑑賞体験ができたことだろう。プログラムと作品の魅力的な関係を実感できる機会となった。
前日の東京駅をパンにして食べるプログラムと同様、このプログラムも坂本さんが大事にする「食べる」ことの広がりを満喫できた。そして「食べる」ことを通じて、「想像する」ことの可能性までも味わうことができた。ベールに包まれてはいるものの、このプログラムに参加した全ての人にとって、もうナガランドは分からない場所ではない。きっと、この舌がずっと覚えている。(本展運営アシスタント:山下港)