開催概要

今回のバグスクールのメインビジュアルは、𠮷田勝信さんに制作いただきました。その素材となる天然のアスファルトは、𠮷田さんの出展作品にも共通して用いられている素材です。
展示準備の過程で改めて気づかされたのは、数千万年もの時間を内包する天然のアスファルトが、実にさまざまな領域で多様に用いられてきたということでした。𠮷田さんは今回、「光を複製する感光液」として天然のアスファルトを使用していますが、実はそれ以外にも、版画や陶器といった表現の分野から、神事に至るまで、幅広い文脈で活用されています。
今回は、アスファルトに強い関心を寄せる𠮷田さんに、その奥深さについてお話しいただくほか、同じく関心を持つ芦川瑞季さん、坂本森海さん、Aokidさんがカジュアルな座談会形式で参加します。さらにゲストとして、文化人類学を研究する森口武さんを迎え、アスファルトという素材の持つ多層的な魅力を、参加者全員で掘り下げていきます。

登壇者
・バグスクール出展アーティスト:Aokid(オンライン出演)、芦川瑞季、坂本森海、𠮷田勝信
・バグスクール担当キュレーター:池田佳穂
・ゲスト:森口武(文化人類学研究者)


開催日時

2026年1月24日(土)17:00 – 18:30

参加費

無料
事前要申込


今日も展示は進み、広がっていく
𠮷田勝信さんがリサーチを重ね、自身の制作にも用いている天然のアスファルト。今回は、𠮷田さん、アスファルトと自身の制作に繋がりのある芦川瑞季さん坂本森海さん、「アスファルトは好きじゃない」と言うAokidさん(オンライン参加)、ゲストに文化人類学研究者の森口武さんという多彩かつ濃厚なメンバーで、本展キュレーターの池田佳穂さん進行の下、アスファルトについてざっくばらんに語り合うトークイベントが開催された。重要なのは、誰もアスファルトの専門家ではないという点だ。決して、レクチャーのようにアスファルトについて教えるのではなく、それぞれの経験をベースに、素直な言葉を交わし合い、時にオーディエンスも交えながら互いに学び合っていく。多方向の繋がりを大切にするバグスクールらしいトークイベントとなった。
まず、𠮷田さんが、日本の天然アスファルトの歴史や文化について、そして𠮷田さんが再現を試みた、世界最古とも言われる写真技術の発明家ニエプスについて、豊富な資料とともにレポートする。時折、森口さんが加えてくれる文化人類学研究者ならではのコメントが話に奥行きを与えてくれる。トーク中、聴衆も天然アスファルトを触る機会があったのだが、黒く、粘土のように柔らかく、匂いは油粘土のようだ。原油由来であることを実感する。そして、𠮷田さんが自身で採取した天然アスファルトを用いて実験を試みた、陶芸家の坂本さんと版画家の芦川さんの体験談へと話は移る。確かに、陶芸では金継ぎのように割れた焼き物の修復に、また版画(リトグラフ)では石板に塗布する素材に、アスファルトが使わることがあるそうだが、流石の2人も実際にアスファルトを使うことは初めてらしい。写真と共にリアルな体験談が語られる。坂本さんはあまりの便利さにすっかり気に入ってしまった一方、芦川さんは上手くいかなかったそうだが、重要なのは結果よりも、展示が始まってからもこうして出展作家同士の関係を持ちながらリアルタイムで挑戦を続けていたということだろう。設営が終われば完成なのではなく、プログラムと共に前進を続けていくバグスクールならではの試みで、展示という営みの新たな可能性すら感じさせてくれた。
話は、このようにプロセスを大事にする制作・展示(今回の展示で𠮷田さんはプロセス自体を展示している)と文化人類学との類似点や、Aokidさんの路上でのダンス経験にまで広がっていった。一つの素材でここまで世界が広がるとは。登壇者も聴衆も、ここにいた誰もが、バグスクールのように豊かな繋がりのあるプラットフォームさえあれば、アートの射程はどこまでも広がり得ることを感じたに違いない。(本展運営アシスタント:山下港)