開催概要
「サテライト・コール・シアター」には、公募で集まった「家」でのケアに携わっている「ホーム・ケアリスト」12名と、ホーム・ケアリストたちの創作に伴走する「ナラティブパートナー」5名、空間デザイナー、事務局5名、そして、企画・演出を担当する竹中香子のメンバーで創作をしています。基本的にオンライン上で創作を進めえる本プロジェクトは、住んでいる場所、職業、年齢、専門分野、ケアとの関わり方も異なるメンバーで構成されています。また、作品創作に関わることがはじめてのメンバーもたくさんいます。
こんなにも多様なメンバーが集まって、ひとつの作品を創作する時、どんなことを心がけたらいいのか。
そんな不安やドキドキと向き合う「はじめの一歩」として、『サテライト・コール・シアター』創作開始初日に、ナラティブパートナーのひとりでもある田村かのこさんにこのプロジェクトに関わるメンバーに向けた「コミュニケーションデザインワークショップ」を実施していただき、全員で参加しました。
現在、表現の現場では、ハラスメント問題が深刻化していますが、ハラスメントは、ひとりひとりの「心がけ」だけで解決する問題ではありません。ひとりひとりの「心がけ」に依存しない、チーム全体で具体的な行動を伴った安全な場づくりを行うために、「コミュニケーションデザイン」の具体的実践方法を考えるワークショップを開催します。(竹中香子)
<講師の田村かのこさんより>
自分の出自や特質、経験や立場にかかわらず、参加する誰もが安心して意見を言える創作の場をつくることは、その場を企画するアーティストや主催者の責任であり、同時に、作品そのものの質にも直結する重要な要素です。
けれども、その大切さを理解していても、「では実際にどうすればいいのか」は簡単に答えが出せることではありません。集まるメンバーや状況によって必要な工夫や有効な方法は変わってきますし、それを練習する機会が少ないことも、難しさの一因だと感じています。
今回のワークショップでは、それぞれの創作の現場を思い描きながら、どんな「はじめの一歩」があれば、心理的な安全が確保され、誰もが安心して参加できる場を立ち上げられるのか。そしてそこから、核心を突く問いや、社会へのまなざしを持った作品づくりへとつなげていけるのか。具体的なアイデアを出し合いながら、考え、練習する場にしたいと思います。
すでに現場で試行錯誤を重ねている方はもちろん、これから創作の場づくりに関わっていきたいという方も歓迎です。安心できるコミュニケーション環境は、自然に生まれるものではありません。でも、あなたの小さな発言や行動が、誰かにとっての「ここにいていい」と思える空間をつくります。表現は、ときに痛みや苦しみを伴うものであり、暴力的な側面もある。だからこそ、安心して挑戦できる土台が必要です。心身の健康を守りながら、質の高い表現を創り続けるために、どんな場づくりが可能か、ともに考えましょう。
<タイムライン>
18:00-18:10:「サテライト・コール・シアター」の創作プロセスについて
18:10-18:40:田村かのこによるコミュニケーションデザインに関するレクチャー
18:40-19:30:お互いを知るためのワークショップを考えるワークショップ
19:30-20:00:全体でシェア、質疑応答、ディカッション
<こんな方におすすめ>
・他者と協働して創作を行う/行っていきたいアーティストやアートの実践者
・グループをまとめる立場にある方、将来的にそうなる可能性のある方
・参加型のアートプロジェクトに関心のある方
・心理的に安全な場づくり/他者とのコミュニケーションに関心のある方
2025年7月5日(土)18:00 – 20:00
無料
BUG
15名
<レクチャー・進行>

アート専門の翻訳・通訳者の活動団体「Art Translators Collective」代表。人と文化と言葉の間に立つ媒介者として翻訳の可能性を探りながら、それぞれの場と内容に応じたクリエイティブな対話のあり方を提案している。札幌国際芸術祭2020ではコミュニケーションデザインディレクターとして、展覧会と観客をつなぐ様々な施策を実践。非常勤講師を務める東京藝術大学大学院美術研究科グローバルアートプラクティス専攻では、アーティストのための英語とコミュニケーションの授業を担当している。

一般社団法人ハイドロブラスト プロデューサー・俳優・演劇教育
201年に渡仏。日本人としてはじめてフランスの国立高等演劇学校の俳優セクションに合格し、2016年、フランス俳優国家資格を取得。パリを拠点に、フランス国公立劇場を中心に多数の舞台に出演。俳優活動のほか、創作現場におけるハラスメント問題に関するレクチャーやWSを行う。2021年、フランス演劇教育者国家資格を取得。2021年以降、太田信吾監督作品すべての映画プロデュースを行う。2024年初戯曲を執筆し、『ケアと演技』を上演。「演技を、自己表現のためでなく、他者を想像するためのツールとして扱うこと」をモットーに、アートプロジェクトを企画している。