2025年のアートワーカー(企画者)向けプログラム「CRAWL」はAプログラムとBプログラムと2つに分けて開催。 

Aプログラムは誰でも参加可能なレクチャー、ワークショップなどのイベントをオンラインとBUGにて開催し、参加者同士のコミュニケーションがより活発化することをねらった。 

Bプログラムは定員40名の実践型とし、2025年6月15日のキックオフミーティングから9月6日のクロージングミーティングまでのおよそ3ヶ月のオンラインプログラム実施。企画書をコミュニケーションツールとすることで、アートに限らないさまざまな分野の「企画者」の育成・ネットワーク構築をはかった。参加者とメンターとBUGの投票により、来年度にBUGにて開催する企画を2本選出した。 
(※2025年10月31日(金) 公開) 


Aプログラム 

開催イベント・ワークショップ数:16 
総参加者数:824人 

■アーティスト・アートワーカーのための文章書き方講座(全4回) 
文章の書き方講座はBUGのキュレーターであり、CRAWLを設計・運営する檜山真有による基本編文体編実践編をオンラインで開催。また、CRAWL WEEKS内で参加者がテキストを持ち寄り、全員が添削する「みんなで添削編」を2回(両日とも同内容)開催。全4回の講座・ワークショップとなった。 

■CRAWL WEEKS 
アーティストや作品ではなく、その周縁におかれがちなアートワーカーの仕事、生活にフォーカスをあてたワークショップやトークなどのイベントを5月にBUGにて開催した。 
開催したイベントは以下の通り。 

5月16日(金)19:00-20:30 
オンライントークイベント:空間づくりのプロのお仕事・キャリアについて 
小滝タケル(美術作家/square4代表)×中村友美(舞台美術家/セノグラファー) 

2025年5月17日(土)18:00 – 20:00、2025年5月25日(日)13:00 – 18:00(両日BUGにて開催) 
レクチャー/ワークショップ:会ったことのない人に私信を書く 
大岩雄典(美術家) 

2025年5月17日(土)13:00 – 16:00(BUGにて開催) 
ワークショップ:woven planning 
花井優太(クリエイティブ・ディレクター/編集者) 

2025年5月21日(水)、22日(木)19:00 – 21:00(BUGにて開催) 
アートワーカー・アーティストのためのテキストの書き方講座 【BUGでみんなで添削編】 
檜山真有(キュレーター/リクルートアートセンター) 

2025年5月23日(金)19:00 – 21:00(BUGにて開催) 
ワークショップ:知らない誰かとアートを語る哲学対話 
永井玲衣(哲学者・作家)×高内洋子(「中屋敷智生×光島貴之「みるものたち」」企画)  

2025年5月24日(日)14:00 – 16:00(BUGにて開催) 
トークイベント:子育てをしながら制作(仕事)をする事について 
吉田山(アート・アンプリファイア/キュレーター)×加藤翼(アーティスト)×平野由香里(美術家)×黑田菜月(写真家)×山口梓沙(写真家) 

2025年5月24日(土)19:00-21:00(BUGにて開催) 
トークイベント:美大に美術の現場はあるか 
西田秀己(女子美術大学 芸術学部 准教授)×長坂有希(広島市立大学 芸術学部 講師)× 寺田健人(東京藝術大学 美術学部 助教)× 平野真美(名古屋造形大学 造形学部 特任講師) 

2025年5月25日(日)19:00 – 21:00 
オンライントークイベント:わたしのなかの”あの子”と話す方法 ―「聞かれること/聞くこと」によるケアー 
尹雄大(作家/インタビュアー)×竹中香子(一般社団法人ハイドロブラスト プロデューサー・俳優・演劇教育) 

■レクチャーシリーズ 
文化芸術のフィールドでさまざまな形で「企画」について考え、実践してきた方たちによるレクチャーを7月から9月まで毎月オンラインにて開催した。


Bプログラム 

応募状況 
応募期間:2025年3月15日(金) – 5月28日(金)(※〆切18時まで) 
応募総数:37件 

■応募傾向 
自身による複数選択式で最も多かったジャンルが「美術」で75パーセントの割合を占めた。その次には「その他」続いた。 昨年、CRAWLで選出された二つの企画が障害やケアに関わるテーマであったため、同様のテーマの企画が多く応募された。 

プログラムについて 
プログラム期間:2025年6月15日(金)ー 9月6日(土) 

参加者が4人1組となり互いの企画書を読み合い、意見交換を行うピアレビューののち、本プログラムのメンターの池田佳穂(インディペンデントキュレーター)、和田ながら(演出家/したため主宰)によるオフィスアワーがそれぞれ1回ずつ設けられた。 

本プログラムのネットワーク構築という側面にフォーカスしたプログラムには、6月・7月・8月には、参加者同士がオンラインにて交流・情報交換することのできるネットワークミーティングがある。アートワーカーが共有する悩みや企画書の書き方など多岐に渡る話題が共有された。 
また、資料や連絡事項を共有するツールとして、Google Classroomを使用し、本プログラムに参加している人に限らない広く「CRAWL」に関心のある人がメンバーであるDiscordにてサーバーを開設し、他企画の告知や自己紹介などが投稿できるようにし、ネットワーキングの一助としている。 

企画の選出について 
参加時に提出した企画書をプログラム内にてブラッシュアップし、最終提出されたものの中から、9月6日のクロージングミーティングにて、2026年にBUGで開催するプログラムを2件決定した。 
参加者、メンター、BUGがひとり5ポイントを任意に振り分け、それに投票理由を80~100字にて記載する方法にて、最も投票獲得数が多い2件を選出した。 

選出企画・企画者は以下の通りである。 

坂田ミギー「はじめてのホワイトキューブ|カメラを手にしたキベラ“スラム”の若者たち(仮)」(2026年4月25日(金) – 5月31日(日)) 

坂田ミギー/Miggy SAKATA
NPO法人SHIFT80代表理事 / 株式会社こたつ共同CEO  クリエイティブディレクター 

SIer、広告制作会社、博報堂ケトルを経て、株式会社こたつを設立。
旅の途上で出会ったアフリカの孤児・貧困児童と女性へのサポートを目的としたエシカル・クリエイティブ・コレクティブSHIFT80ファウンダー、NPO法人シフトエイティ代表理事。
旅やキャリアに関するエッセイ執筆、講演のほか、キャンピングカーをモバイルオフィス&家として、日本各地を旅しながら働くスタイルを実践中。



著書:「旅の良書2020」に選出された世界一周旅行記『旅がなければ死んでいた』(KKベストセラーズ)、『かわいい我には旅をさせよ ソロ旅のすすめ』(産業編集センター)など。

受賞歴:Forbes JAPAN 2025年「NEXT100:100通りの世界を救う希望」、価値デザインコンテスト グランプリ・経済産業大臣賞、
第11回女性社長アワード「J300アワード」、Cannes Lions、New York Festivals International Advertising Awards、Spikes Asia、Ad Fest、広告電通賞など。 ACC2022審査員。 

も「ドゥーリアのボールルーム(仮)」(2026年6月8日(水) – 6/28(日)) 

撮影:菅野恒平
も/MO

台北育ち、京都市在住。
覚えやすくするために名字の一文字目を活動名の「も」としています。
近年は、NPO法人Dance Boxのダンスカンパニー「Mi-Mi-Bi」のメンバーとして活動。 

多様な在り方を持つメンバーそれぞれが「わたし」らしい踊りを仮に置くところからはじまり、(わたし、ではなく)その場に確信が表れるべく、稽古を続け、関係を揉み合っているうちに、上演日がやってくる、そのような日々を送っています。
システムエンジニアとしてキャリアを積む中、自身の病やそこからはじまる医療、医療以外の社会的な経験を通じて「ケア」とその手前にあるその対象が持つ共振性に関心を持つようになりました。言語化すると難しいことでも、アイディアを直感的に理解したり、いろいろな人と体験を共有できるような企画を立案していきます。 

主な出演作に、Monochrome Circus「FLOOD」(2019、京都芸術センター)、
Mi-Mi-Bi「島ゞノ舞ゝゝ」(2024、豊岡演劇祭公式プログラム)など。 


アンケートの結果

■プログラムについて 
終了時に参加者に行ったアンケートでは、プログラム満足度は「大変よかった」「よかった」が100%であった。 
また、「参加時から自分の企画をブラッシュアップできたか」という設問には100%が「はい」と回答。「この企画を他の企画公募や助成金申請で応募することを検討しているか」という設問には、63.2%が「はい」と回答したことから、本プログラムを超えたところでも影響を及ぼすことが分かる。 
企画決定の満足度についても「大変よかった」と「よかった」が75%を占め、引き続きピアレビューや相互投票など水平的な企画の決め方を続けていきたい。 

■参加者の活動経歴について 
CRAWLで掲げる企画者の例(キュレーター、プロデューサー、演出家、ドラマトゥルク)が自身を説明するにふさわしい肩書きか、という設問では「どれにも当てはまらない」が68.4パーセントを占めた。プロジェクトマネージャーや展示ディレクターなど様々な肩書きが自身を説明するにふさわしいと答えた。 
自身で企画する回数について2~4回以上が大多数を占め、本プログラムにて初めて企画する人に向けても、より参加しやすいプログラムにすることが課題となった。