2024613
ファイナリスト決定

6月9日にセミファイナリスト20名と審査員が1対1で二次審査を実施。

翌日、審査員全員でのディスカッションを経て、ファイナリスト6名を決定しました。

 

今後、ファイナリスト6名はファイナリスト展の展示位置を話し合いで決定します。
また、展示や設営方法についてインストーラー(展示設営技術者)に相談しながら、ファイナリスト展の準備を進めていきます。
ファイナリスト展(ファイナリスト6名によるグループ展)は、2024年9月25日から開催しますので、どうぞお楽しみに!

 

※アーティスト名五十音順

審査員

※五十音順・敬称略

内海潤也
石橋財団アーティゾン美術館学芸員

1990年、東京都生まれ。東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科修了。

黄金町エリアマネジメントセンターを経て、現在は石橋財団アーティゾン美術館学芸員。ジェンダーに関心を寄せ、日本と東南アジアの現代美術を調査・研究、展示企画、執筆などを行う。

菊地敦己
アートディレクター、グラフィックデザイナー

1974年東京生まれ。武蔵野美術大学彫刻科中退。2000年ブルーマーク設立、2011年より個人事務所。ブランド計画、ロゴデザイン、サイン計画、エディトリアルデザインなどを手掛ける。とくに美術、ファッション、建築に関わる仕事が多い。また、「BOOK PEAK」を主宰し、アートブックの企画・出版を行う。主な仕事に、青森県立美術館(2006)のVI・サイン計画、横浜トリエンナーレ(2008)のVI計画、ミナペルホネン(1995-2004)、サリー・スコット(2002-20)のアートディレクションなど。

たかくらかずき
アーティスト

1987年生まれ。3DCGやピクセルアニメーション、3Dプリント、VR、NFTなどを使用し、東洋思想による現代美術のルール書き換えとデジタルデータの価値追求をテーマに作品を制作している。現在は日本仏教をコンセプトに制作を行う。京都芸術大学非常勤講師。

中川千恵子
十和田市現代美術館キュレーター

パリ第8大学造形芸術学科現代美術メディエーションコース修士課程修了。2019年より現職。

担当した主な展示・展覧会に、「インター+プレイ」展第2期(トマス・サラセーノ、2022)、 レアンドロ・エルリッヒ《建物―ブエノスアイレス》(2021-)、「大岩雄典 渦中のP」(2022)。

横山由季子
東京国立近代美術館研究員

1984年生まれ。世田谷美術館、国立新美術館、金沢21世紀美術館を経て現職。企画した主な展覧会に「ルノワール展」(国立新美術館、2016年)、「大岩オスカール 光をめざす旅」(金沢21世紀美術館、2019年)「内藤礼 うつしあう創造」(金沢21世紀美術館、2020年)など。

第2回BUG Art Award
応募状況・審査の選考経緯レポート

(2024/06/28 公開)

このレポートは、BUG Art Awardの審査が公正に運営されていることをオープンにするためのものです。審査員は、応募者に対して議論を尽くした上で、投票を重ね、セミファイナリストやファイナリストを選出しました。BUGはABOUTページに記載の通り、適切なパートナーシップや協働者との信頼関係を大切にしながら、応募者みなさんのキャリアを支援していきたいと考えています。

応募状況

応募期間 2024/1/24(水)10:00~2/21(水)17:00

応募総数 265件

応募者の傾向

個人の応募が95.8%と多数を占め、グループ応募は4.2%であった。

 

応募回数は初回が85.7%、2回目が14.3%である。応募者の現住所は、東京が47.7%とほぼ半数、次いで神奈川が13.3%、そして京都が7.2%、千葉が5.3%と続く。その他の道府県はいずれも5%以下であった。応募自体は29都道府県からあり、今後はそのほかの18県からも応募いただけるよう、全国区で認知度を上げていきたい。

 

応募作品の分類(応募者自身が応募時に最大3つまで選択)内訳は、絵画が18.3%と最も多く、次に “その他” が17.5%。“その他” の中身としては、インスタレーションが半数を占めた*。以降は、彫刻14.2%、映像10.2%、写真8.7%、メディアアート7.0%、イラストレーション6.6%、ドローイング6.2%と続く。これ以外のジャンルは全て5%以下であった。

* 応募作品分類の選択肢にインスタレーションの項目はなし。インスタレーションを構成する個々の表現手法やジャンルを把握するため項目から除外した。

一次審査

(1)事務局による応募資料の事前チェック

・全ての応募書類(PDF)を事務局がチェック。

・白紙やグループ展のプランではない書類は一次審査の対象外とした。

・応募総数265件のうち、応募基準を満たしていない8件を除いた257件を審査に回した。

 

(2)審査員各自による個別評価

・先入観やバイアスをなくすため、審査員はアーティスト名の記載がない書類で審査を行った。

・審査員は202437日(木)〜324日(日)の期間、各自で全ての応募書類に目を通し、評価を実施。

・評価方法は、決められた審査項目を満たすかどうかについてチェックを入れた上で、“二次審査に選出したい10名(組)”に○を、“次点で気になる応募者最大2名(組)”に△を付けるというもの。

 

(3)審査員5名によるディスカッション(オンライン)

・4/7(日)10:00〜17:00にディスカッションを行い、二次審査に進むセミファイナリスト20名(組)を選出。

 

◼︎ディスカッションの概要

審査員の各評価を事務局で集計し、○、△がともに0の応募者はディスカッション対象外とした。

その上で、審査員全員の評価を集約した表を配付。表には、○か△が1つでも付いた応募者全員を掲載し、応募者ID**の昇順に配列した。

今回は○が1つ以上付いている応募者が43名(組)、○は0で△が1つ以上付いている応募者は7名であった。まず、△の中から議論の俎上に載せたい応募者を審査員が推薦し、○43名と△2名、合計45名についてディスカッションすることが決定した。

 

それぞれの応募者に対して、○か△を付けた審査員が評価ポイントを3分程度で説明し、それを受けて他の審査員が質疑を投げかけながら議論を進めた。

全員について意見を出し終えたあと、再度、“二次審査に選出したい15名(組)”に○を付け、投票を実施。集計の結果、○が0の応募者はディスカッション対象外とした。

○が1つの応募者に関しては、○を付けた審査員の意見をもとに協議を行い、2名をディスカッション対象に入れることとした。○が過半数の応募者は、各審査員が評価ポイントを述べ、異論の出なかった8名は二次審査への進出が決定。その他20名の応募者(○1つの2名、○2つの16名、○3つの1名、○4つの1名)については、再投票を実施し、各審査員が“二次審査に選出したい6名(組)”に○を付けた。投票の末、過半数を獲得した○4つの6名、○3つの2名の二次審査進出を決定。

 

0個の1名を除く11名に対し、再び審査員が評価や懸念ポイントを話し合い、最終的には、「応募者のキャリアに対するBUG Art Awardという機会の影響度」や「二次で会って実際に話を聞いてみたい」といった観点も踏まえて、4名が決定した。

 

ディスカッション時に評価ポイントとして出た意見は、「自身のバックグラウンドやキャリアからの経験をコンセプトや表現に上手く落とし込んでおり、独自性を感じられる」、「手を動かすことと思考を回すことの両方がなされている」、「表現がまだ追いついていない部分もあるが、意欲的なテーマを選択しているので、応援の意味も込めて推したい」、「過去作の質が高い。ファイナリスト展は面積の制限もあるが、グランプリに選出されたらかなり見応えのある展示を作れるのではないか」などであった。

 

一方、評価されにくいものについては、「同じ人が何度も応募してきてくれることは歓迎したいが、全く同じ応募資料とプランの内容では、意図が分からないため評価しにくい」、「作品からエネルギーは感じられるが、制作過程やコンセプトを顧みた形跡が見えない」、「(BUGで展示するよりも、)過去作の方が展示場所や見せ方に必然性がある」という意見が上がった。

**応募者がオンラインシステムで応募した際に、ランダムで付与される数字9桁のID。

二次審査

(1)セミファイナリストと審査員が対面で審査(グラントウキョウサウスタワー会議室にて開催)

6/9(日)10:00〜18:00、セミファイナリスト20名が審査員5名全員と一対一で話す対面審査を実施(セミファイナリストが手持ちできる範囲での作品や資料の持ち込みは可とした)。

1人あたり15分間で、セミファイナリストによる展示プランについてのプレゼンテーション、および、審査員からの質疑を行った。

二次審査では、ファイナリスト展のプランと作品が評価対象である。セミファイナリスト全員との対面審査終了後、審査員各々で “翌日のディスカッションに挙げたい10名”に○を付け、この日は終了。

(2)審査員5名によるディスカッション(グラントウキョウサウスタワー会議室にて開催)

6/10(月)10:00~16:30に審査員全員でディスカッションを行い、ファイナリスト6名を選出。

 

◼︎ディスカッションの概要

審査員には、前日に各々が付けた○を反映した表を配付。この時点で、○0は2名、○1つは4名、○2つは2名、○3つは7名、○4つは4名、○5つは1名であった。

○が0の2名はディスカッション対象から外し、残りの18名に関して、各審査員が評価点や疑問点について意見を出し合った。

一通り意見が交わされた後、改めて各審査員が“ファイナリストに選出したい3名”に投票。しかし結果は、○0は8名、○1つが7名、○2つが1名、○3つが2名と票がばらつき、突出した票数もなかったため、追加で1票ずつ投票することにした。結果は、○0は8名、○1つは4名、○2つは4名、○4つは2名となった。この時点で、○が4つの2名はファイナリストへの選出を決定とし、○が0の8名はディスカッション対象外とした。

 

その後、8名に関して引き続き、評価点や気になる点について意見を交わした。

この段階では、「コンセプトとプラン内容のつながり」、「表現の独自性や今後の発展性」などの観点や、「BUG Art Awardは各セミファイナリストにとってどのような機会になり得るのか」、「BUG Art Awardの条件だからこそ選出できる方はいるのか」といった本アワードの意義も含めた議論が展開された。

そして、2回の投票と議論がなされ、追加で3名がファイナリストに決定。最後は2名の候補者から、1名を選出することになった。最後の1名の選出は、「二次審査でのプレゼンテーション方法」、「着眼点の独自性」、「BUG Art Awardが提供し得るもの」など複数の観点で話し合われた末、2回の投票を経て決定した。

 

ディスカッション時に評価ポイントとして出た意見は、「実践と研究を積み重ねることで、自分なりの視点を有している」、「対象へのフェティッシュさが感じ取れた」、「今後もさまざまな意見を取り入れ、経験を積むことで、作品が発展していく兆しを感じる」、「応募資料やプレゼンテーションに収まらない展示をつくることへの期待がある」といった内容であった。

 

落選者に対する期待としては、「自身の制作活動について、言語的な検証も行ってみることで表現の発展が望めそうだ」、「内省は大切だが、展示作品に関しては鑑賞者にも広げよう/伝えようとする視点があるとより良くなる」、「出品作はパターン化されている印象だが、過去作はヴァリエーションがあるので、ぜひ他の表現も見たい」、「要素が詰め込まれているので、もう少し削ぎ落とすことでより強度の高い作品になるのではないか」 といった意見が述べられた。