開催概要
坂本森海さんは、陶芸作品そのものを制作するだけでなく、制作過程に関わる土や火、窯、そして完成した陶芸を器として使う行為、さらにはそれを使う人々や食べ物など、さまざまな側面に目を向けながら作品を展開しています。本ワークショップでは、そうした制作背景を共有するため、陶芸を「つくる」ことにとどまらず、「使うこと」「食べること」までを体験します。坂本さんと一緒に東京駅周辺を歩き、パン型を制作し、その型を使ってパンを焼きます。
※参加者が制作したパン型は、坂本さんの所属する滋賀県の山中suplexにて焼成するため、本ワークショップは2日間セットで行います。
① 2026年1月18日(日)13:00 – 16:00
② 2026年2月 6日(金)19:00 – 21:00
※このワークショップは連続参加型(全2回)です。両日ともご参加いただける方が対象です。
無料
事前要申込

陶芸家/美術家。1997年生まれ。長崎県出身。2019年旧京都造形芸術大学美術工芸学科総合造形コースを卒業。同年からシェアスタジオ「山中suplex」に在籍。陶芸が内包する、土や火、食べることといった根源的な行為や要素を手がかりに、陶芸や映像、ワークショップなどを使って作品を制作している。
主な展覧会:
2025年 「GO FOR KOGEI 2025 」New An 蔵、富山
2025年 個展「火と土と食べたいもの」京都市京セラ美術館 ザ・トライアングル、京都
2024年 「半井桃水館芸術祭 シャンデリア」半井桃水館、長崎
「難しい」パンで味わう喜び
「制作して終わりではなく、制作した焼き物で食事をするまでが陶芸」と語る、陶芸家の坂本森海さん。坂本さんは、焼き物を「作る」だけでなく、「使う」ことまで含めたプロセスを大切にしている。このプログラムでは、制作した焼き物を型にしてパンを焼き、食べることで、そんな坂本さんの考えを体験することができた。
焼き物の型を取るのはなんと東京駅。東京駅の気になる形の物や窪みなど、好きな所に焼き物用の粘土を押し当て、焼き物にし、その焼き物にパン生地を流し込んでパンを焼き、食べる、という流れだ。タイトルの通り正に「東京駅を食べる」。刺激的な内容の詳細を聞いて最初は不安げだった参加者も、粘土片手に「食べる」場所を探しに行く頃には完全に好奇心のスイッチが入った様子で、人目も気にせず、そこかしこで東京駅に粘土を押し当てている。その積極性を引き出すプログラムの力に驚くばかりだ。型を取り終えると、坂本さんのアドバイスを元にしてパンを作りやすい形に粘土を整え、初日は終了した。
2日目、粘土の東京駅は素朴な焼き物になっていた。約3週間の間に坂本さんが焼き上げてくれていたのだ。各自、自分の焼き物を手にし、粘土の時とは変わった土の感触を確かめる。そしてその焼き物にオリーブ油を塗っていく。多過ぎるぐらいで良いと言う坂本さんの言葉通り、焼き物はいくらでもオリーブ油を吸収して、まるで生き物のようだ。十分オリーブ油を塗ったら、その上にライ麦粉を厚く振りかけて準備は完了。焼き物にパン生地を流し込み、オーブンで焼き始める。焼いている間、それぞれがどこで型を取ったのか、なぜそこを選んだのか、写真と共に話を共有していく。エピソードに個性がはっきりと表れる。そしてパンが焼き上がると、ヘラや竹串を使い、焼き物からパンを外していく…のだが、この時参加者は初めて、坂本さんが繰り返し難しいと言っていた意味を知る。パンがなかなか外れないのだ。焼き物の形、オリーブ油と粉の量など、色んな条件が上手くいかないと、パンは焼き物にくっついてしまう。でも、だからこそ、ようやく食べられたパンは格別だ。まるで人類が初めてパンを食べた瞬間のように喜ぶ参加者の姿が忘れられない。
型を取った粘土を一つ一つ丁寧に整え、自分のアトリエで焼き、みんなに美味しいパンを食べてもらいたいと動き回る坂本さんの姿が目に焼き付いている。作家の人となりを知れるのもプログラムの魅力の一つだ。きっと参加者はこの体験をきっかけに、食べることの喜びや楽しみはもちろんのこと、坂本森海さんという作家の作品を、また新しい視点から味わえるようになったに違いない。(本展運営アシスタント:山下港)





















