BUGでは、うらあやか、小山友也、二木詩織、宮田明日鹿の4名のアーティストによる、作品の展示やイベントを開催します。展示スペースには、ワークショップ用スペースや小さな農園、カームダウン・クールダウンスペース* などを設けます。

うらさんとの出会いにより、本展は生まれました。

BUGはステートメントで、「無数のハプニングに、私たちは出会いたい」と掲げています。また、展覧会に限らない活動を展開していきたいという意志から、「アートセンター」を冠しています。その実現に向け、BUGではオープン前の2022年から、複数のアーティスト/アートワーカーと意見交換する機会**を設けてきました。うらさんもそのうちの一人であり、おもしろい場をつくることやアートマネジャーの職能などについて、ディスカッションを重ねてきました。今回は、そのやり取りから生まれたものを展覧会やイベントとして、ひらく試みです。

本展に参加する4名のアーティストは、作品をつくることはもちろん、制作で培った技術をコミュニティの運営や他者の表現のサポートなど、さまざまな活動に展開してきました。今回はその技術を活かして、だれかと一緒に何かをするときに働く力学に注目した作品の展示やイベントを行います。アーティストや来場者が「一緒に行動する」機会を創出することで、同伴しながら何かを生み出すことの可能性や、アートセンターのあり方を探索していきたいと考えています。

コ・キュレーション:うらあやか、野瀬綾(BUG)

*刺激に疲れた人や、初めての場所に来たことでソワソワする人が心を落ち着けるための場所。
**2022年8月25日に開催した「スペース設計の意見交換会」にうらさんも参加。レポートはBUGのnoteで公開中。https://note.com/bug_art/n/n89b02e5ff89d


みどころ

展覧会名に込められた意味

同伴分動態とは、「同伴」「分動」「態」の三つの言葉を組み合わせた造語です。ある人たちが居合わせ、同伴しながら、それぞれが分かれて自由に動く、態(様子、ありさま)を意味します。

本展に参加するアーティストは、生活介護事業所*、美術教育機関などで働きながら制作に取り組んでいるアートワーカー、アーティストです。他者の表現活動のサポートや、学び合うことを通して、他者の表現との間に挟まりながら生活を営む経験やライフスタイルは、作品のアイデアや形態と結びつきます。

*介護を必要とする方に対して、生活のサポートを行うとともに、生産・創作活動や運動・リハビリなどを行う機会を提供する事業所のこと。

同伴することで生まれた それぞれの新作を展示

同伴分動態では、4名のアーティストがそれぞれの新作を出展します。アーティストたちは、「同伴しながらこしらえる技術」──ワークショップや職場、展示室といった複数人が集まる状況から作品を起動させること──を出発点として、作品の制作発表およびイベントを行います。

うらあやかは、他者や他の生物との関わり合いを軸に、参加型のパフォーマンス作品を主に制作してきたアーティストです。今回は、2名のパフォーマーがボディランゲージを使って、「世界をよい方向に変えるためのアイデア」をやり取りするパフォーマンス作品を発表します。会場で希望者は、観るだけでなくパフォーマンスに参加することも可能です。参加という形で作品への干渉をひらく背景には、鑑賞というコミュケーションへの、うらの期待が潜んでいます。また毎週水曜は、来場者とテーブルを囲んで「一緒に何かをやってみるイベント」が行われます。これは会期中を通して変化し続ける、実験的な取り組みといえます。
このような取り組みは、これまでも観客(その場に居合わせた人)との協働によって成立する作品を発表してきた、うららしいアプローチです。また同時に、鑑賞者は展覧会において「同伴者」として関係を結ぶ相手である、という意志の表れでもあります。

小山友也は、ものや風景、社会システムなど無生物との間にあるコミュニケーションを、自身の身体を通して観察するパフォーマンス、ドローイング、映像作品を制作してきたアーティストです。本展では、小山があるアートセンターに乗り込み、そこで働くスタッフから護身術で「制圧」される映像作品を展示します。作品や展覧会を守るため、不測の事態を静かに待つ看視スタッフの働きの誇張──スタッフによる護身術によって作家自身が制圧される──により、相対するふたつの身体は、あるひと続きの構造として可視化されます。
そのほかにも、オルタナティブな美術教育施設の「裏方」として運営に携わってきた人たちへのインタビューの記録や、BUGスタッフと共作した標語などを見せます。それらの作品は、周辺のものとして見落とされがちな、ある作品が生まれるまでの過程や作品が存在する空間、その空間を運営する人々に着目してつくられました。

二木詩織は、映像や対話を用いた作品の制作を通して、目の前で起きたことに対する感覚を部分的に増幅させることを試みてきました。本展では、自身が週5日間働く、生活介護事業所の様子やそこに通う人々との関わりを映像や写真で展示します。映像では、事業所を利用する方々が絵や刺繍、手織りなどを創作する光景や、事業所恒例の散歩の様子がとらえられ、そこには人々のやり取りや会話、距離感が映し出されます。一方でこの作品を見る人は、そこに可視化されないもの、例えば、その会話が生まれるまでの積み重ね、個々の心境などにも思いを馳せることになるかもしれません。二木は作品を制作するにあたり、参加者の許可を丁寧に取りながら進めてきました。そのコミュニケーションのプロセスや、これまでに築かれてきた関係性などが作品には反映されています。また会期中には、事業所の利用者と支援員を会場に招き、作品鑑賞日を設けます。その際、事業所の人々には壁面の一部に「これからやりたいこと」を書き込んでもらう予定です。

宮田明日鹿は、編み物の手法を用いた作品の制作や、手芸をしたい人が集い、学び合う場をつくる「手芸部」のプロジェクトを国内各地で行っているアーティストです。今回は、農業用ネットを編み物で制作した大きなインスタレーションと、会場内でのスナップエンドウの栽培、堆肥を作る分業風景の映像作品などを展示します。6年前から家庭菜園をもつ宮田にとって、野菜を育てることは生活の中で大きな割合を占める営みですが、作品として表現することは初の試みです。宮田は昨年から、生活と作品に共通するリサーチとしてコンポスト学校に通い始めました。そこで起こる生命の円環──人間の出した生ごみが微生物の働きによって堆肥になり、それを用いて野菜を育てる──から、「わけあうこと」や「ともに生きのびること」について考えを巡らせ、制作を続けています。また会期中には、「ネットのようなものを編む日」「スナップエンドウを採る日」を設け、宮田の営みや活動を展開します。

そのほか会場内には、出展アーティストとBUGスタッフの野瀬が書いた日記をまとめた冊子を配架します。この日記を書く取り組みは、うらからの呼びかけにより始まりました。2021年から自身のブログを公開しているうらにとって日記は、目の前で起こっていることを基にイメージを膨らませたり、過去を想起して自由に実験のできる公開スタジオとして機能してきました。今回、5名の日記には、作品制作のプロセスやモヤモヤとした悩み、ついつい考えてしまうことなどが綴られます。作品と日記が同じ空間に並置されることで、鑑賞する方々も発想の過程に同伴・分動し、作品の多層性を感じていただけることでしょう。

会期中のイベント開催

会期中には、多数のトークイベントやワークショップを開催します。現在決定している下記以外にも、順次イベントを追加する予定です。
※詳細/ご予約はイベントページをご覧ください。


開催情報

参加アーティスト

うらあやか、小山友也、二木詩織、宮田明日鹿

会期

2025年4月2日(水)– 5月6日(火)

時間

11:00 — 19:00

休館日

火曜 ※ただし5月6日(火)は開館します。

入場料

無料

主催

BUG