アートワーカー(企画者向け)オンラインプログラム「CRAWL」は2024年6月15日のキックオフミーティングから9月29日のクロージングミーティングまでのおよそ3ヶ月半のオンラインプログラムであった。
どの分野でも必要となる企画書をコミュニケーションツールとすることで、アートに限らないさまざまな分野の「企画者」の育成・ネットワーク構築をはかった。

(※2024年10月31日(木) 公開)

応募状況

応募期間:2024年3月15日(金) – 5月31日(金)(※〆切18時まで)
応募総数:44件

■応募傾向
自身による選択式で最も多かったジャンルが美術であり、演劇とパフォーマンスが続いた。

BUGではこれまで展覧会しか開催したことがなかったが、展覧会以外の企画が多く応募された。抽選で参加者40名が決定される予定だったが、応募総数が44件であったため、本年は抽選を行わず応募者全員を参加者とした。(なお、使用言語の齟齬があり、1名が辞退したため参加者は43名となった)

プログラムについて

プログラム期間:2024年6月15日(日) – 9月29日(日)

本プログラムのメンターの池田佳穂(インディペンデントキュレーター)、花井優太(クリエイティブ・ディレクター/編集者)によるオフィスアワーが参加者に1回ずつ計2回設けられた。
また、池田・花井によるレクチャー+ワークショップが参加者向けに6月28日、7月5日・12日に行われた。
より多様な企画者の仕事や、企画者に必要なスキルを得るためのレクチャーシリーズを計3回行った。レクチャーシリーズのみプログラム参加者以外にもひらかれたプログラムとなった。

レクチャーシリーズのアーカイブは以下である。

本プログラムのネットワーク構築という側面にフォーカスしたプログラムには、7月・8月・9月には、参加者同士がオンラインにて交流・情報交換することのできるネットワークミーティングがある。
アートワーカーが共有する悩みや企画書の書き方など多岐に渡る話題が共有された。
また、資料や連絡事項を共有するツールとして、Google Classroomを使用していたが、それを日常のネットワークを繋ぐツールとして活用した。 参加者の他企画の告知や自己紹介などが投稿でき、ネットワーキングの一助となった。

企画の選出について

参加時に提出した企画書をプログラムを通じて、ブラッシュアップし、9月15日に最終提出されたものの中から、9月29日のクロージングミーティングにて、2025年にBUGで開催するプログラムを2件決定した。選出方法は、参加者同士で読み合うピアレビュー(一人1票、1pt)、メンター(一人2票、5pt)、BUG(2票、5pt)の投票形式である。投票理由や任意で他企画のコメントや、今後一緒に仕事をしてみたい人などを募り、クロージングミーティングと各参加者に個別にメールにてコメントを送付した。

選出企画・企画者は以下の通りである。

高内洋子「みるものたち」(2025年6月4日(水) – 6月29日(日))

高内洋子/Yoko TAKAUCHI

兵庫県生まれ、京都府在住。関⻄学院大学大学院文学研究科博士課程後期課程単位取得退学。博士(哲学)。重症心身障害児施設、グループホーム、ホームヘルパーなど障害のある人と関わる業務に携わりながら、2012年より全盲の美術家・光島貴之の専属アシスタントとして作品制作のサポートをおこなう。2020年より、アートギャラリー兼制作アトリエ「アトリエみつしま」マネージャーを兼任。施設運営管理および展覧会やワークショップなどの企画を担う。携わる主な企画として、展覧会「それはまなざしか」(2021年、アトリエみつしまSawa-Tadori)、「まなざしの傍ら」(2023年、同会場)、「今村遼佑×光島貴之感覚をめぐるリサーチ・プロジェクト〈感覚の点P〉展プレイベント」(2024年、東京都渋谷公園通りギャラリー)。ワークショップ「視覚に障害のある人・ミーツ・アート」(2021年〜)、「ぎゅぎゅっと対話鑑賞」(2023年〜)ほか。趣味は知恵の輪。

竹中香子「サテライト・コール・シアター」(2025年7月4日(金) – 7/21(月・祝))

竹中香子/Kyoko TAKENAKA

一般社団法人ハイドロブラスト プロデューサー・俳優・演劇教育
2011 年に渡仏。日本人としてはじめてフランスの国立高等演劇学校の俳優セクションに合格し、2016年、フランス俳優国家資格を取得。パリを拠点に、フランス国公立劇場を中心に多数の舞台に出演。2017年より、日本での活動も再開。俳優活動のほか、創作現場におけるハラスメント問題に関するレクチャーやワークショップを行う。2021年、フランス演劇教育者国家資格を取得。主な出演作に、市原佐都子作・演出『妖精の問題』『Madama Butterfly』。太田信吾との共同企画、映画『現代版 城崎にて』では、プロデュース、脚本、主演を担当し、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2022 にて優秀芸術賞を受賞。2024年初戯曲を執筆し、YAU CENTERにて『ケアと演技』を上演。太田信吾との共同演出作品『最後の芸者たち』は、Festival d’Automne Paris 2024のプログラムとしてパリで上演される。初の長編映画プロデュース、太田信吾監督作品『沼影市民プール』が、全国公開を控える。「演技を、自己表現のためでなく、他者を想像するためのツールとして扱うこと」をモットーに、アートプロジェクトの企画を行う。

アンケートの結果

■プログラムについて
終了時に参加者に行ったアンケートでは、プログラム満足度は10段階評価のうち、半数(53.2%)が大変満足である10と9に回答した。
また、「参加時から自分の企画をブラッシュアップできたか」という設問には95%が「はい」と回答。「この企画を他の企画公募や助成金申請で応募することを検討しているか」という設問には、70%が「はい」と回答したことから、本プログラムを超えたところでも影響を及ぼすことが分かる。

また、アンケート回答者の全員がCRAWLでの今後のネットワーキングを希望していることから、プログラム終了後の参加者たちのネットワーキングの場をつくることも今後の課題として検討される。

■参加者の活動経歴について
参加者の活動するフィールドは「美術」と答えた人が最も多く、その次に「デザイン・広告」、「演劇」が続いた。また、自身での企画経験については「初めて」、「2~3回目」、「4回目以上」がそれぞれ30%ずつの回答と拮抗する結果となった。