作品解説

こ.っ.か.て.ん.ぷ.く.のアイデア
うらあやか
2025
パフォーマンス
パフォーマンス共同研究・出演 : 井口 美尚、橋元 千里、小峯 篤朗、中村 梓希、阪口 智章、綱川 知里、豊永 武蔵
会期中14日間に渡って、6名のパフォーマーとうらが対話とダンスを用いて、パフォーマンスを上演する作品です。これには希望者も参加できます。この作品では、既存の国家構造からゆっくりと”みんな”で抜け出るために、答えの出ないことを対話しながら思考の枠組みを外す練習を行います。パフォーマンスは、毎回、「NOとYESの練習」から始まり、一時的に有効な他者との許容範囲を探ります。そして、疑問から導かれたいくつかのテーマについての対話とアクションを行い、作品タイトルである「国家てんぷくのアイデア」の対話へと一日かけてゆっくりと移行してゆきます。会場にある墓石のような見た目の木製の可動式看板には、パフォーマンスで取り扱ういくつかの議題が書かれています。この看板は、パフォーマーが不在の日、もしくはパフォーマンス途中に来た人を引き込むためにも機能します。
撮影:小山友也

鑑賞者のためのノート(雲の中の小さなイナズマ)
うらあやか
2025
72.8×103cm
ドローイング
うらが 書き貯めてきた日記やメモを
再編成し制作された、ドローイング作品です。鑑賞者や他者についての思考の中で出現した「主語となる単語」を繋ぐ青い線は「イナズマ」のように描かれ、表記のゆれや断片的なアイデア、断言できない曖昧なことが記載されたテキストは「モヤモヤ」とした雲のように捉えることができます。うらはこれまでに参加型パフォーマンスの作品を発表してきた中で、主語や他者への呼びかけ方に関心を持ち続けてきました。そこには、自身が制作する参加型パフォーマンスに「参加できない存在」、広報が届かない人やこの世を去った人への意識が含まれます。

すべての水曜日はアマチュアでごく個人的なことのために
うらあやか
2025
ワークショップ
※毎週水曜にテーブルで開催
「アマチュアでごく個人的」な表現と言論についてのワークショップが行われます。アマチュア性や個人的なことを歓迎する背景には、オーガナイズするうら自身が参加者の影響によって変化することへの期待があります。

制圧する看視員/されるアーティスト
小山友也
2025
1920×1080px
a:5分9秒
b:6分52秒
c:9分23秒
d:5分36秒
ビデオ
協力 : 大槻英世、加藤 香央里、川瀬 裕子、城間 雄一、畑山 樹、堀田 ゆうか
二名の人物(あるアートセンターのスタッフと小山自身)がコンタクトし、組み合う護身術によって「制圧」が行われるまでの様子がスローモーションで再生されます。一連の制圧の動きを収めたショットが引き伸ばされる間、相対するふたつの身体は互いに作用し合った構造として組み合わさり、1コマずつ短い静止を繰り返します。他方の攻撃を受け流しながら制圧に転ずるフォームと、受け身を取ろうとする「負けるため」のフォームのファイト・コレオグラフィーは大槻英世(アーティスト・空道黒帯)と小山が共に作りました。
撮影:小山友也

「生を行動で満たさずに、空白に向けて行為を再編成する」ためのPDCAサイクル
小山友也+野瀬綾(BUG)
2025
サイズ可変
紙にインクジェットプリント、
ネームホルダー
分業制、行動の形骸化、輸送と散歩、労働と制作の違いなどについて、小山と野瀬(BUG)が対話を行いながら制作されました。異なる立場から制作されたテキストは、理知的なものもあればポエティックなものもあり、ときに反省の意を滲ませ、ときに諭すように鑑賞者に語りかけます。これらの言葉は一見、不統一に映りますが、いずれもビジネスのフレームワークとして使われる「Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act ion(改善)」という一連のサイクルに組み込まれています。しかしながら、この 作品においてのPDCAは、業務の改善や目標の達成を目指すのではなく、「人生を形骸化した行動で満たさずに生きること」や「目的に行動を従属させないこと」を実現するための方法として提案されています。

Potato3
小山友也
2023
1920×1080px
6分54秒
ビデオ
協力 :BUG Cafe
BUG Cafeのキッチンで撮影されたパフォーマンスビデオです。過去にも小山は自宅のキッチンでこのシリーズを撮影してきました。ドラマチックな照明をつけたキッチンで、ジャガイモが隕石のように見える動き方を試したり、画面の淵を彷徨わせたり、ゆっくりと動かしてみたりする手の様子は、まるで一緒に遊んでいるかのようです。この映像の中でジャガイモは、食品としての有用性と目的から外れ、宙吊りの存在となっています。

「表現しない」
・可能な限りの悪事を考える
・数をかぞえる
・今までで最もロマンティックなLOVEを思い出す
小山友也
2025
パフォーマンス
※週末に不定期で路上パフォーマンスを上演します。
「可能な限りの悪事を考える」「数をかぞえる」「今までで最もロマンティックなLOVEを思い出す」という3つのトピックをBUGの前の路上で上演するパフォーマンス作品です。この3つは、「脳内の活動であり、外部からは観測できない」という点で共通しています。通行人に紛れながら不定期に開催される、かつ、動きが可視化されにくいこのパフォーマンスは、鑑賞者(もしくはたまたまカフェの席に腰をかけた人)の想像力を駆動させる装置として働きます。

展覧会のエンドロール
小山友也
2025
1440×1080px
7分41秒
ビデオ
協力 : うらあやか、野瀬綾、二木詩織、宮田明日鹿
展示室の出入口頭上に設置された《展覧会のエンドロール》では、この展覧会に関わった全ての人物の名前が列挙されています。

散歩の記録/それぞれのまま一緒に過ごす
二木詩織
2024~2025
サイズ可変
64分20秒
ビデオ・写真
撮影・出演・協力 : 社会福祉法人かれん アートかれん利用者・支援員の皆様
撮影・編集協力 : 宮川知宙
プロジェクションされた映像と写真からなるインスタレーション作品です。映像作品は、事業所恒例のお散歩にカメラと録音機材を持ち込み、お散歩に参加するメンバー(事業所に通う利用者、二木を含む事業所の支援員、映像撮影補助スタッフ)が互いに撮影した動画を繋ぎ合わせて制作されました。スクリーンの裏にかけられた4枚の写真は、撮影中に起きた「ちょっとショックだったこと」の記録写真です。

散歩の記録/思い出しながら絵を描く
二木詩織
2025
サイズ可変
7分8秒
ビデオ、品川太成による絵
品川太成による絵と、その制作過程を記録した映像からなる作品で
す。事業所に通う品川さんは、家族旅行やお出かけなどを思い出しながら絵を描くことを続けてきました。まず線で輪郭を描いたあと、色で埋め尽くしてゆき、最終的には抽象的な絵となります。裏面には、その出来事にまつわる単語や描いたものが言葉で羅列され、そのままタイトルとなります。その制作プロセスを普段から目にしていた二木は、絵の中に品川さんの経験のどのようなことがピックアップされるのかを知るために、今回は事業所恒例の散歩から絵を描いてもらいました。

やりたいことリスト
二木詩織
2025
サイズ可変
壁にクレヨン、ペン
※このリストは会期中やりたいことが追加されていきます。
会期中には、事業所の利用者とスタッフが二木と共に作品を鑑賞したり、「これからやりたいこと」を対話したりする日を設けます。対話から生まれた「やりたいこと」は、随時、展示会場の壁に《やりたいことリスト》として書き足されてゆきます。

今日までの出来事
二木詩織
2025
サイズ可変
ビデオ
※この映像は会期中更新されていきます
事業所の利用者が絵や刺繍、手織りなどを創作する光景や、休んでいる様子が記録されています。この映像データは、日記のように会期中も更新される予定です。「職場で滞在制作しているみたい」という二木の言葉の通り、親密な関係を作品にして展示することは、日常をアーティストの視点で対象化することになります。継続される日常と成果 物として固定化される作品という異なる時間軸の幅の中で、そのあわいにある表現を二木は模索しました。

「ちいさな庭で」
落ち葉堆肥の切り替えし実技記録
宮田明日鹿
2024~
サイズ可変
14分28秒
ビデオ
落ち葉堆肥の制作過程の協働風景を撮影しています。宮田は昨年から、生活と作品に共通するリサーチとしてコンポスト学校に通い始めました。堆肥を作ることは、世界に土を増やすことになります。人間の出した生ごみや落ち葉、刈草、モミガラ、米ぬか、鶏ふん、牛糞、かべ土などを、微生物の働きによって堆肥となり、またそれを用いて野菜を育てることに繋がってゆきます。野菜ができた後は誰かとシェアをしたり、自分で料理をして食べたりと、生活と制作行為が円環を成してゆきます。そうした展開が展示室内でも起きることを期待して、今作では実験的にスナップエンドウを栽培することになりました。

「ちいさな庭で」
スナップエンドウのためのネット
宮田明日鹿
2025
約60cm×500cm
サイズ可変
糸、テグス
農業用のネットを編み機とかぎ針で編んだ作品です。ピンク色のネットには、憲法13条の条文から、「国民」の語を取り除いて再編成した「生命、自由及び幸福追求に対する権利」という言葉と、宮田の家で収穫したスナップエンドウの写真から抽出した柄が編み込まれています。黄色のネットに、「個が個であるための、連帯と協働」という文章に加え、パレスチナの伝統的な刺繍のモチーフであるスイカ、種の貯蔵庫と、宮田のドローイングによる白いポピーとオリーブの柄が編み込まれています。
制作の背景には宮田の、「国民」という定義への疑問と、「世界市民としてみんなと考えたい」という思いがあります。憲法の内容や、市役所や駅で人権宣言を掲げる看板がよく目に留まるようになった自身の変化についても思いを巡らせながら、そのステートメントの書かれたネットを使って、展示会場内でスナップエンドウを育てます。ステートメントに、成長していくスナップエンドウのツタが絡んでいくことは、植物との協働によって言葉に命を吹き込む試みだともいえるでしょう。会期中には、そのスナップエンドウを収穫し、会場にいる人たちと食べるイベントを企画しています。
撮影:小山友也

「ちいさな庭で」
植物と土のラグ
宮田明日鹿
2024~
約60×170cm
糸(ほぼウール、シルク、
ナイロン、アクリル、モヘア等)
樹脂、裏地レーヨンネット
スナップエンドウの中央にあるラグマット作品《「ちいさな庭で」植物と土のラグ》は、来場者が腰をかけることができます。ラグマットの図柄は、宮田の家の畑で育てているねぎぼうず、ダイコン、にんじん、あずき、そして畑の様子が描かれています
ハンドアウト
展覧会クレジット
うらあやか、野瀬綾(BUG)
野瀬綾、飯野優美(BUG)
飯野優美、堀田ゆうか(BUG)
野瀬明子(BUG)
鈴木梨穂
阪中隆文
小滝タケル、加藤広太 、鈴木基真、砂田百合香 、成田輝 、開田ひかり 、松尾駿太朗 、森洋樹(Square4)