株式会社リクルートホールディングスはアートセンターBUGを9月20日にグランドオープンします。 

記念すべき1回目の展覧会として雨宮庸介個展「雨宮宮雨と以」(読み:あめみやきゅうとい)を開催いたします。雨宮は2000年の第15回グラフィックアート『ひとつぼ展』グランプリを受賞し、2011年には現公益財団法人江副記念リクルート財団の奨学金を受給してオランダ留学を実現するなど、キャリアを築く中で当社が度々バックアップしてきたアーティストです。 

オランダ留学以後はドイツ・ベルリンへ拠点を移し、活動を続けてきました。絵画や彫刻、映像、パフォーマンスを取り入れた領域横断した制作方法は、「世界」というものの条件や普遍性に揺さぶりをかけるための実践とも言えるでしょう。 

たとえば、2014年にはじめた1300年かけて行うプロジェクト「1300年持ち歩かれた、なんでもない石などはその最たる例とも言えます。このように、アートによって世界をまなざし、組み替えようとする態度は、BUGの理念と共鳴します。
本展では雨宮のこれまでの活動の蓄積を新たに発展させ、まっさらの空間に化学反応を起こすような出来事を創出してゆきます  

展覧会について

■展覧会名に込められた意味

「雨宮宮雨と以」という変わった展覧会名は「あめみやきゅうとい」と読んでください。作家の苗字である「雨宮」に続くのは「Q(きゅう)」と「問い(とい)」。よく目を凝らしてみると不思議に満ちた世界をいちいち問い直したり、疑問を呈すことで、織り直される新たな不思議が本展では充満していきます。
また、漢字に注目してみると、雨宮の鏡文字である「宮雨(きゅう)」と、ものごとの基点を意味する「以」が使われています。雨宮を鏡でうつしたときに表われる「宮雨」は、作家そのものが鏡の中へ自らと似て非なる形で潜り込み、雨宮宮雨に並ぶ「と以」は、以上と以下の境目を示します。これまで雨宮が掲げてきた「いつのまにかの越境」を引き出す展覧会名です。

 

■人生最終作のための公開練習

最終作や絶筆の事を、白鳥が死に際に鳴く事になぞって、「スワンソング」と言います。雨宮の試みは常にこのスワンソングのためであり、本展も例外ではなくスワンソングのための長い長い準備の一環といえます。

本展のために新しくはじめた原稿彫刻シリーズは、雨宮がこれまで紡いできた作品の中での原稿(スクリプト)を言葉の持つ脆弱さや繊細さを持ったまま、彫刻という永続性と象徴性が信じられているメディウムと組み合わせます。また、その原稿は、作家本人が会場にて行う話すことや鑑賞者とのコミュニケーションを中心としたパフォーマンスであるレクチャーパフォーマンスによって生み出されていきます。

スワンソングや人生最終作というとどこか後ろ暗いものを感じてしまいますが、一個人の生よりもはるかに長いスパンで生きることとなる「作品」をどのように残してゆくのか、雨宮の設定している課題はいたってポジティブです。つまり、本展においては、パフォーマーとして作品の素材ともなっている雨宮の不在をどのように祝うことができるのか。木曜日(10月5日、19日、26日)はラッキーデーとして、雨宮ではない人たちが雨宮の紡いできたレクチャーパフォーマンスを引き継ぎます。さらに、9月30日はラッキーデーのためのプラクティスを雨宮とパフォーマーの2人で行います。そこで得られる「わたし(=雨宮)」と「あなたたち(=雨宮以外の私たち)」が「わたしたち」に変わる感触を確かめる瞬間まで目の当たりにすることができます。準備というよりも試行錯誤、試みというよりも営みとも言うべき、一人のアーティストの固い決意と七転八倒で迂回に満ちた生き方は展覧会の範囲を超えたところできらめきを発します。

 

■アーティスト・雨宮庸介の挑戦

本展において雨宮が試みることは「世界」の翻訳です。過去作である映像作品や新作となる原稿彫刻のシリーズからなるインスタレーション、作家本人によるレクチャーパフォーマンスにて構成される本展は、言葉や物質、身体といった様々な要素により成り立っています。

この世界には言葉にできないような出来事が毎日起こり、私たちは言葉にならないような感情を前に立ち尽くすこともあるでしょう。かろうじて見つけた近しい言葉で、私たちは普段のコミュニケーションをはかります。

雨宮は逐語訳(原文に対して文法を忠実に翻訳すること)と自由訳(原文に対して意味や受け取る印象を忠実に翻訳すること)、という二つの翻訳の方法を表現の手法として使い分けます。時に直接的に、時に詩的に、言葉を物質として翻訳したり、身体を言葉として翻訳したりすることで、雨宮にとって、さらには、私たちにとって「世界」とはどこからどこまでなのかを問いかけます。

私たちが普段は行わないコミュニケーションの方法は、時間や空間を超えて普遍的なものとして機能し、アートという営みの真髄をそこに見ます。

本展では、昨年までベルリン在住であった雨宮が帰国後に見せる展示としては最も大掛かりなもので、会期中の大半を会場内で過ごすという作家の挑戦を目撃します。雨宮の活動当初より貫かれている制作への動機の他に家族やライフスタイルの変化というプライベートな出来事も織り込まれながら、展覧会は生成変化してゆきます。

作家紹介
雨宮 庸介/Yousuke AMEMIYA

1975年茨城県生まれ。山梨県在住。第15回グラフィックアート『ひとつぼ展』グランプリ。現公益財団法人江副記念リクルート財団の奨学生として2011年に渡欧し、2013年Sandberg Institute(アムステルダム、オランダ)修了。2014年度文化庁新進芸術家海外研修員(アムステルダム、オランダ)。以降、ベルリンに拠点を構え、2022年に帰国。現在、日本を拠点に活動。 

主な個展に『H&T. A,S&H. B&W. (Heel&Toe. Apple,Stone&Human. Black&White.)』SNOW Contemporary、東京(2021)、主なグループ展に『土とともに 美術にみる〈農〉の世界―ミレー、ゴッホ、浅井忠から現代のアーティストまで―』茨城県立近代美術館(2023)、『Reborn-Art Festival 2021-22』日和山公園 旧レストランかしま、石巻(2021)、『りんご宇宙―Apple Cycle/Cosmic Seed』弘前れんが倉庫美術館、青森(2021)など。 

雨宮庸介個展「雨宮宮雨と以」予告動画

展覧会に先立って雨宮庸介さんへのインタビューを行いました。
本編から編集したショートバージョンを展覧会の予告動画としてお届けします!


声:雨宮庸介(本展出品作家)
撮影/編集: 竹久直樹
撮影: 齊藤公太郎

関連イベント
雨宮庸介個展「雨宮宮雨と以」× BUG Cafe コラボメニュー
1300年後のコーヒー 飲み比べセット

BUGでは展覧会ごとに併設するBUG Cafe(運営:株式会社HAGISO)とコラボメニューをつくっていきます。
雨宮が2014年にはじめた1300年かけて行うプロジェクト「1300年持ち歩かれた、なんでもない石」を発想源にし、1300年後のコーヒーに想像を膨らませ、カカオやドライフルーツなどを調合した2種類の代替コーヒーとRブレンドの飲み比べセットです。
本展にも出品されている《石巻13分》のスクリプトを抜粋したオリジナルステッカー(計6種)をランダムでおつけします。

※本メニューは14時からの提供となります。
※本メニューは店内限定メニューです。

 

提供価格:850円(税込)

 

BUG Cafeについて

開催情報
会期

2023920日(水)~1030日(月)

時間

11:00 — 19:00

休館日

火曜

入場料

無料

主催

BUG

《For The Swan Song A》について

《For The Swan Song A》は雨宮の不在時に「木曜日はラッキーデー」として、代打を以下のように立てました。

また、十全なラッキーデーとするために事前のプラクティスを行います。

 

■木曜日はラッキーデーのためのプラクティス
2023年9月30日(土)
松本奈々子
(パフォーマー、ダンスアーティスト、振付家)

 

■木曜日はラッキーデー-For The Swan Song A 雨宮庸介の代行-
2023年10月5日(木)
布施琳太郎
(アーティスト)

 

2023年10月19日(木)
宮坂遼太郎
(パーカッション奏者)

 

2023年10月26日(木)
捩子ぴじん
(ダンサー、振付家)

《果物彫刻の公開制作》について

《果物彫刻の公開制作》は以下の方たちによって行われます。

 

会期中の土曜日と10月29日を除く…白川真吏
2023年9月23日、10月14日、28日、29日…堀田ゆうか
2023年10月7日…高橋里奈
2023年10月21日…梶雄介

展覧会クレジット
キュレーション

檜山真有(BUG)

運営

片野可那恵、山越梓(BUG)

広報

桑間千里、石谷茉莉子(BUG)

制作

飯野優美(BUG)

告知物デザイン

菊地敦己

衣装

吉田山

撮影・編集

竹久直樹

撮影

齊藤公太郎

ブレインストーミング

鹿野震一郎

設営

山際悠輔、下山彩、小邑恭平、石井絵里子、田中啓介、HIGURE 17-15 cas

作家インタビュー

作品制作からライフスタイルの変化、アートへの関心のきっかけなど、アーティストとしてのキャリアを20年以上続けている雨宮さんへ今だからこそ聞きたい14の質問をお伺いしました。


出演:雨宮庸介(本展出品作家)
撮影/編集:竹久直樹
撮影: 齊藤公太郎