
(c) Aya FUJIOKA
株式会社リクルートホールディングスが運営するBUGでは、2026年10月14日(水)より、藤岡亜弥個展「Forget Me Not」を開催します。1996年に自らの日常を写した「なみだ壺」で BUGの前身であるガーディアン・ガーデン主催の「写真[人間の街]プロジェクト」に参加。2005年に移民としてブラジルに渡った祖母にまつわる「離愁」で「第24回写真『ひとつぼ展』」に入選、2017年には個展「アヤ子、形而上学的研究」を開催するなどリクルートがデビュー当時からキャリアを応援してきたアーティストです。
本展は国内外で活躍する藤岡がBUGとのコミッションで新シリーズを展開。藤岡は9年前にオーストラリア・メルボルン在住の女性から、ある日本人女性の存在をめぐる一通のDM(ダイレクトメッセージ)を受け取ります。地元である広島・呉から遠く離れたオーストラリア、その二つの都市の戦後から現在までをつらぬく、まさしく「事実は小説よりも奇妙なり」というべき、めくればめくるほど謎が増してゆく制作がスタートしました。
サンパウロで祖母の軌跡を追う「離愁」、ヨーロッパを旅した「さよならを教えて」、5年過ごしたニューヨーク生活で生まれた「Life Studies」などこれまでのシリーズと違わず、今回も導かれるように世界を旅し、ファインダーから物語を編み出す藤岡の新機軸を打ち出す展覧会です。
みどころ
新シリーズ、撮り下ろし、映像作品への初挑戦
本展の軸となるのは藤岡が初めて挑戦した映像作品を含んだ撮り下ろしによる新シリーズ《Forget Me Not》。
3年の構想・制作期間の本作で取り扱うのは、実際に自身の身に起きた未解決のできごとです。当事者として、自身もどのようになるか分からないできごとの現実が刻一刻と自分の選択とシャッターによって切り拓かれていくさまは、ドキュメンタリーでもルポルタージュでもなく、「①作者は作品の中に登場すべきではない/②選択によって作者の見解を示す/③創作的処理を必要とする」*というノンフィクション・ノヴェルの特色と重なります。
写真という決定的な事実に即したものを提示しながら、感情をかき立てるストーリーとしても提示するというアンビバレントな方法にて展覧会はつくられます。
呉とメルボルン、そしてサンパウロを結ぶ女たちの人生
藤岡の出身地である広島県は海外への移民送出の数が全国1位でした。藤岡の祖母も移民2世としてブラジルで生まれ、親が買った宝くじが偶然当たり、20歳のときに家族で再び日本に、広島・呉に戻ることになりました。その祖母、フジオカキミエと一文字違いのフジオカキミコを探すオーストラリア・メルボルン在住のとある女性から届いたメッセージから、祖母ではないその一文字違いの女性は誰か、 という謎解きをするために藤岡は呉とメルボルンに向かいます。
実在するかどうかも分からないキミコを探す旅は、さまざまな人々を巻き込み、彼女ら/彼らの勝手な憶測が飛び交い、笑いあり、涙ありの人間が持つおかしみに触れるものでした。
藤岡は呉とメルボルンをめぐる戦後の歴史とその中を生きた女性の人生、さらには、かつて軍港として、そして戦後は臨海工業地帯として発展を遂げながらも、衰退してゆく地方都市である呉の現在に目を向けます。
そのような偶然と必然に翻弄されながらも逞しく生きた女性たちが辿った人生と彼女らが暮らした街を藤岡の視線から捉えることが本展の大きなテーマです。
写真とはとりかえしのつかないもの
これまでスナップを自身の作品の撮影技法とすることが多かった藤岡亜弥は、小型カメラにて自分が見たものを瞬間的に捉えることで、自分が見ていなかったものまで捉えてしまう不可逆性のことを「とりかえしのつかないもの」だと述べてきました。
本展の制作において、藤岡はある家庭で保管されていた写真たちに出会い、いわばファウンドフォトと言えるそれらを通じた作品制作に取り組みます。ファウンドフォトもスナップと同様に被写体の匿名性が共通しているのにもかかわらず、それが誰かというミステリがスナップよりも色濃く宙空に吊るされます。
誰かも分からない遥か過去の写真を通じて、赤の他人が出会い、交流を重ねてゆき、謎を解決しようとすればするほど、それはヒントにならず謎そのものになってゆく。撮影するばかりであった写真が解き明かすものへと変わるとき、「とりかえしのつかない」写真の意味もまた大きく変化してゆきます。
*トルーマン・カポーティ、龍口直太郎訳『冷血』「解説」p.557(新潮社、1978年)

1972年広島生まれ。2007年に文化庁新進芸術家海外研修制度によりニューヨークに滞在。2013年より故郷・広島を拠点とし、終戦から70年が経過した広島の現在を写した写真集『川はゆく』(赤々舎)で木村伊兵衛写真賞ほか多数受賞。2021年には金沢21世紀美術館「ぎこちない会話への対応策」展に出品。ニューヨークの国際写真センターやSEIZAN GAlleryのグループ展など国内外で展示多数。サンフランシスコ近代美術館、東京都写真美術館に作品が収蔵されている。主な写真集に『わたしは眠らない』(赤々舎)、『さよならを教えて』(Ricochet)などがあり、写真集『Life Studies』を刊行。2026年7月には昨年英語・フランス語で刊行され、アルル国際写真祭にて14万人を動員した書籍・展覧会「I’m so happy you are here」が日本に「まなざしの奇跡 日本女性写真家の冒険」として巡回。京都芸術大学講師。
開催情報
2026年10月14日(水曜日)- 11月29日(日曜日)
11:00 – 19:00
火曜
※11月3日(火・祝)は開館、11月8日(日曜日)は臨時休館
無料
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