2025年2月19日(水)より、第1回BUG Art Awardでグランプリを受賞した向井ひかりによる個展「ザ・ネイムズ・オン・ザ・ビーチ」を開催します。向井ひかりは、人の目線の高さほどある白い箱の側面や上部に、ストローや砂、鏡といった、誰もが日常的に目にしている素材を使った小さな立体作品や、ドローイング、映像を配置した「対岸は見えない」で、第1回BUG Art Award*にてグランプリを受賞しました。審査員からは独創的な着眼点とアイディア、そしてBUGの空間を意識した展示方法が評価されました。本展は、新しい表現への挑戦や、アーティストとしてのキャリアを支援することを目的としています。

向井は、日常生活のなかで頭に浮かぶ直感的なイメージを具現化することを大事にしています。例えば、行き交う車がルールを正確に守ることにより、自ずと動きを制御されていく様子や、水の入ったバケツの中に晒(さらし)が浮かび、光によって透けて見える光景など、私たちが日々見落としてしまう些細な出来事を観察し、作品を生み出します。

また、武蔵野美術大学造形学部彫刻学科に在学の頃より一貫して、木片やガラス、紙粘土といった身近な素材を組み合わせ、両手で持てるサイズの小さな立体作品を作ってきました。本展では、天井高7.2mの空間を隅々まで使い、向井にとって最大規模となる新作に挑戦します。グランプリ受賞から約1年、準備を重ねてきた向井の個展をぜひご覧ください。

* BUG Art Awardは、制作活動年数10年以下のアーティストを対象にしたアワードです。審査員からのフィードバックの提供や、展示・設営に関する相談会の開催などのサポートを行い、審査過程においてもアーティストの成長に関与していきます。


みどころ

展覧会名に込められた意味

海辺の砂は、鉱物や動物の死骸だったものが、風化や波の力によって細かくなり、流れ着いたものです。小さな砂粒にも、昔は一つ一つに名前がついていました。向井は、日常で名もない砂粒を見つけるようにささやかな出来事をすくいあげ、それらを並べて繋ぎ合わせ、新たに名前をつけなおします。
例えば、展示作品の一つである《クリームろうそく》は、向井が幼少期に見た映画のワンシーンや、予備校生の時に読んだ彫刻家による対談集の内容、そして大学生の時に見た鉄材といった、複数の記憶が元になっています。このように、向井の中で蓄積された日常生活のたわいもない出来事を、制作の段階で繋ぎ合わせることで作品を生み出します。

第1回BUG Art Award グランプリ受賞者としての挑戦

本展では、新作を含む全17点を展示予定です。これまで向井の作品は自身の手で作ることができるサイズが主でしたが、今回は、展覧会の施工・設営のスペシャリストであるインストーラーと協働することで、向井にとって最大規模となる新作に挑戦しています。
また、審査員や向井が関心を持つ芸術学の専門家、平倉圭氏との対談を通して、制作費や空間の使い方、作品の配置についてなど、新たな視点を取り入れ、展示プランをアップデートしてきました。向井は、自身の作品やプランについて人に伝えていくことは、これまで言葉にすることが難しかった自身の活動や制作について言語化する機会になったと言います。BUG Art Awardを通して成長し続ける向井の展示をご覧ください。

会期中トークイベントを開催 

3月9日(日)に内海潤也さん(石橋財団アーティゾン美術館学芸員/第1回BUG Art Award審査員)をお迎えし、トークイベントを開催します。展覧会の見どころや作品が生まれた背景などについてお話しする予定です。
その他に、3月2日(日)にダンスユニット、アグネス吉井の白井愛咲さんとKEKEさんをお招きしたワークショップ、3月1日(土)、3月15日(土)には向井の制作の一部を体験することができるワークショップを開催予定です。詳細は決まり次第ウェブサイトでご案内します。

<イベント実施日>
①3月2日(日)14時〜16時 予定
ゲスト:アグネス吉井 白井愛咲さん、KEKEさん(ダンスユニット)
②3月9日(日)19時〜20時30分 予定
ゲスト:内海潤也さん(石橋財団アーティゾン美術館学芸員)
③3月1日(土)15時〜16時30分 予定 向井ひかりワークショップ
④3月15日(土)15時〜16時30分 予定 向井ひかりワークショップ


アーティスト紹介

向井ひかり
向井ひかり / Hikari MUKAI
アーティスト

1998年千葉県生まれ、東京都育ち。2022年武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒業。
砂地に通りかかったら、砂山を作ってみる。なんとなく砂をちょっと手で盛る。
手に押された砂つぶの流れのような小さな出来事も、宇宙で起こりまくっている膨大な出来事の一つと捉えて記録していく。惑星の爆発と同列に扱う。
複数の素材や、数々の出来事を合わせて彫刻を作ります。
近年の活動に、個展「リンクスケーター」(WALLA、2023年)、「もてぎ里山アートフェスタ」(城山公園、2022年)、CSLAB×MELLOWゼミ「ジェンダーに関する観察と実践」(黄金町エリアアートマネジメントセンター K-Library、2019年)など。令和三年度 武蔵野美術大学 卒業・修了制作展 優秀賞受賞(2022年)、第1回 BUG Art Award グランプリ受賞(2024年)。
http://mukaihikari.com


過去作品


開催情報

会期

2025年2月19日(水)– 3月23日(日)

時間

11:00 — 19:00

休館日

火曜

入場料

無料

主催

BUG