2023112
ファイナリスト展
第1回BUG Art Awardのファイナリスト6名によるグループ展の開催情報を公開しました。
会期中2月6日(火)にはグランプリを選出するための公開最終審査を行い、グランプリ1名を決定します。
グランプリ受賞者には、約1年後のBUGでの個展開催の権利と、個展開催費上限300万円とアーティストフィーが支給されます。

■会期:2024年1月24日(水)~ 2月18日(日) 11:00-19:00 火曜休館
■公開最終審査:2024年2月6日(火) 17:00-20:40(予定)
■ファイナリスト:乾真裕子、彌永ゆり子、近藤拓丸、宮内由梨、向井ひかり、山田康平 (敬称略・五十音順)
※詳細はEXHIBITIONページよりご確認ください。
2023822
ファイナリスト決定
8月20日、BUGにて、セミファイナリスト20名と審査員が1対1で二次審査を実施。
翌日、審査員全員でのディスカッションを経て、ファイナリスト6名を決定しました。
今後、ファイナリスト6名はファイナリスト展の展示位置を話し合いで決定します。
また、展示や設営方法についてインストーラー(展示設営技術者)に相談しながら、ファイナリスト展の準備を進めていきます。
ファイナリスト展(ファイナリスト6名によるグループ展)は、2024年1月24日から開催しますので、どうぞお楽しみに!

※アーティスト名五十音順
2023726
セミファイナリスト決定
応募資料による一次審査を7月16日に行い、セミファイナリスト20名を選出しました。
審査員との1対1の対面審査に向けて、展示プラン作成レクチャーや展示プラン・展示計画書についての相談会を行います。
二次審査は8月20日・21日に実施します。

※アーティスト名五十音順
審査員
内海潤也
石橋財団アーティゾン美術館学芸員

1990年、東京都生まれ。東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科修了。

黄金町エリアマネジメントセンターを経て、現在は石橋財団アーティゾン美術館学芸員。ジェンダーに関心を寄せ、日本と東南アジアの現代美術を調査・研究、展示企画、執筆などを行う。

 

〈一次、二次審査を終えて〉

二次審査初日。20組の作家と半日かけて対面で話したあと、ひと息つくため、八重洲の地下をぷらぷらと歩いた。豊かな時間だったな、と。目の前で行き交う人たちに、刺激的な「BUG」を持っている人がこれだけいるんだよと、展示を通して伝えられる可能性に喜びを感じました。「BUG」という言葉への期待、その言葉を冠したアワードへ応募する人たちへの期待、目を通すことになるプランへの期待、二次審査で生まれる会話への期待。悠長な——頭のフル活用を終え、身体的な疲労が重くのしかかっている今、そうは言い切れないのだが——「選択する者」として、書類や対面を通じて想定よりも多くの期待に出会いました。ここで得たエネルギーや複数の視点に開かれる時間が、このBUGというスペースで展開されていくことを、さらに期待したい。

煎じて詰めて言えば、ありきたりですが、選出しないことを選ぶことが難しかった、ということです。

 

 

菊地敦己
アートディレクター、グラフィックデザイナー

1974年東京生まれ。武蔵野美術大学彫刻科中退。2000年ブルーマーク設立、2011年より個人事務所。ブランド計画、ロゴデザイン、サイン計画、エディトリアルデザインなどを手掛ける。とくに美術、ファッション、建築に関わる仕事が多い。また、「BOOK PEAK」を主宰し、アートブックの企画・出版を行う。主な仕事に、青森県立美術館(2006)のVI・サイン計画、横浜トリエンナーレ(2008)のVI計画、ミナペルホネン(1995-2004)、サリー・スコット(2002-20)のアートディレクションなど。

 

〈一次、二次審査を終えて〉

「アート」と名打ったアワードであるから当然といえば当然ではあるが、現代美術の領域の作品が大半であった。個人的には、デザインや工芸、建築、プログラミング、あるいはもっと他の何かに出自を持ったオルタナティブの応募がもっとあっても良いのではないかと思う。作品の形式は、絵画や彫刻といったオーソドックスなものは少なく、平面イメージとオブジェ、映像などを組み合わせたインスタレーションが主流だった。行き過ぎたコンセプチュアルの揺り戻しか、工芸的マテリアルを取り込んだ作品も目についた。美術の権威性を批判的に扱った作品も複数あったが、脱ホワイトキューブのようないささか古風なスタイルに留まっていた。応募作全体に、コンセプトと造形のバランスに大きな破綻はなく、安心して選考した。デザイナーの私が言うのもなんだが、ややデザインされ過ぎているのではないかという感もある。募集形式によるところも大きいので、このあたりは改善が必要かもしれない。

 

 

たかくらかずき
アーティスト

1987年生まれ。3DCGやピクセルアニメーション、3Dプリント、VR、NFTなどを使用し、東洋思想による現代美術のルール書き換えとデジタルデータの価値追求をテーマに作品を制作している。現在は日本仏教をコンセプトに制作を行う。京都芸術大学非常勤講師。

 

〈一次、二次審査を終えて〉

応募作家のみなさんと同じ作家の身分で審査員をさせていただき、誠に恐縮しております。同じ作家として、皆さんの作品や作家としてのスタンスを僕の感性で素直に判断させていただきました。一次審査を通過した20組の皆さんの作品クオリティはどれも非常に高いものばかりでした。個人的な当事者性・興味・感性と外の世界・時代・社会全体をどんなふうにつないでいるのかが僕の興味の対象でした。「作る」ことに対する意欲がとても高いものばかりで元気をもらいました。皆さん今後も変わらず、社会になんとなく漂っている「ムード」を気にしすぎず、自分の興味関心があるテーマをひたすらに追求して作り続けて欲しいと思いました。

 

 

中川千恵子
十和田市現代美術館キュレーター

パリ第8大学造形芸術学科現代美術メディエーションコース修士課程修了。2019年より現職。

担当した主な展示・展覧会に、「インター+プレイ」展第2期(トマス・サラセーノ、2022)、 レアンドロ・エルリッヒ《建物―ブエノスアイレス》(2021-)、「大岩雄典 渦中のP」(2022)。

 

〈一次、二次審査を終えて〉

「1_WALL」から一新したBUG Art Awardが、どのような賞として歩んでいくかを定めるための大事な一歩となったと思います。一次審査では、400近くの応募から20組を選考する形式上、作品の独自性、展示プランの構成力、応募書類から窺えるコンセプトや、制作の継続力を持つ作家たちが選出されました。二次審査で、セミファイナリストの方々に直接お会いし、実作品を目にしたり、展示プランについて聞くことにより、より立体的に各作家の姿勢をイメージすることが出来ました。それぞれの作家が、どのようにテーマを扱い、実社会の問いや世界の現象へ接続するか、その際に言葉をどのように用いるかといった点を複合的に評価しようと努めました。各々の関心について、独自の視点や技法で作品を生み出そうとする作家たちがファイナリストとして取り上げられたのではないかと思います。

 

 

横山由季子
東京国立近代美術館研究員

1984年生まれ。世田谷美術館、国立新美術館、金沢21世紀美術館を経て現職。企画した主な展覧会に「ルノワール展」(国立新美術館、2016年)、「大岩オスカール 光をめざす旅」(金沢21世紀美術館、2019年)「内藤礼 うつしあう創造」(金沢21世紀美術館、2020年)など。 

 

〈一次、二次審査を終えて〉

さまざまなジャンルの作品をひとつのアワードの俎上に載せて議論するのは、想像以上に大変なことでした。審査員5名が、それぞれにもつ多様で複雑な評価軸を保ちつつ、ときに専門や見方の異なる他の審査員の意見に耳を傾け、自身の考えを検証し、アップデートしながら、納得できるまで議論できたのは良かったです。セミファイナリストに選ばれた20組の作品が、それだけ力作揃いで、可能性の感じられる作品が多かったということですが、最終的には、作品のスタイルが確立されているかどうかを問わず、作家がその作品を作る個人的な必然性と、それを他者と共有したり、問いかける意思が強く感じられる作品がファイナリスト展に進むことになったように思います。今回選ばれなかったプランもそれぞれに良さがあり、実際の作品を見てみたいものばかりでしたので、応募者の皆さんが落胆することなく、各自のフィールドを切り開いて、活動を続けていかれることを願っています。

 

 

※五十音順・敬称略

第1回BUG Art Award
応募状況・審査の選考経緯レポート

(2023/9/11 公開)

 

審査員コメント

※審査員コメントはこちらのページに掲載しています

応募状況

応募期間 2023/3/1(水)10:00~5/17(水)17:00

応募総数 415件

 

■応募者の傾向

BUG Art Awardでは複数名のグループ等でも応募可としたが、グループ応募は7%、個人の応募は93%と個人応募が圧倒的に多い結果となった。

 

応募者の現住所は、東京が42.7%と多数を占めた。次いで神奈川が11.6%、そして大阪が5.5%、京都が5.3%と続く。その他の都道府県は全て5%以下であった。BUG Art Awardでは一都三県在住者以外も応募しやすいよう、審査や展示のための打ち合わせにかかる往復交通費(公共交通機関)を負担する。今後は一都三県以外の応募者がより増えるよう告知等で工夫したい。

 

応募作品の分類(応募者自身が応募時に最大3つまで選択)内訳は、“その他”が37.6%と最も多く、“その他”の中身としてはインスタレーションが1/3以上を占めた*。次点は、絵画が33.7%、以下、メディアアート14.2%、写真11.3%、彫刻11.1%、イラストレーション7.2%と続く。これ以外のジャンルは全て5%以下であった。

 

制作活動歴(制作の定義は応募者自身で決定)は、5年以下の応募者が69.6%を占めた

* 今回、応募作品分類の選択肢にインスタレーションの項目はなし。インスタレーションを構成する個々の表現手法やジャンルを把握するため項目から除外した

一次審査

応募総数415件のうち応募基準を満たしていない19件を除いた、396件を審査員が書類で審査した。

 

(1)応募書類の事務局チェック

・全ての応募書類を事務局がチェックし、明らかに著作権などの権利を侵害しているもの、法律に違反しているもの、過度に公序良俗に反しているものは一次審査の対象外とした。

・ファイナリスト展(6名のグループ展)のプランが9㎡を超えている応募も散見されたが、今回は応募要項での説明が不十分であったため、一次審査の対象とした。動画の提出URLがYouTubeかVimeo経由ではないものや、動画URLの入力欄以外(出展作品や過去作品のPDF内)に動画URLを記載している応募書類に対しても、同様の説明不足があると判断し、一次審査を行った。

・第2回からは、応募要項により分かりやすく条件を記載すると同時に、応募要項違反の書類は一次審査対象外とする。

 

 

(2)審査員各自による個別評価

・審査員は2023/6/12(月)〜7/3(月)の期間、各自で応募書類をチェックし、評価を実施。

・評価は、決められた審査項目に対して点数をつけた上で、“二次審査に選出したい20名”に○を付ける方法で実施。

※先入観やバイアスをなくすため、審査員はアーティスト名の記載がない書類で審査を行った。

 

(3)審査員5名による一次審査(オンライン)

・7/16(日)10:00〜16:00にディスカッションを行い、二次審査に進むセミファイナリスト20名を選出。

 

ディスカッションのサマリ

審査員には、審査員各自の評価を集計した表を配布。集計表は、“二次審査に選出したい20名”として多く○が付いた順で記載。○の数が同じ場合は、その中で点数が高い順に配列した。

審査の冒頭でディスカッションの進め方を確認。○が3つないし2つ付いている応募者17名は、ディスカッションの俎上に載せることが決定。また、○が1つの65名に対しては、その中から審査員各々が特にディスカッションしたい応募者を数名選出。ディスカッション対象者は34名に決定。その後ディスカッションを進める中で、2名が追加となり36名に。

 

36名一人ずつの応募書類を全員で見返し(オンラインで応募書類を画面共有)、評価したポイントを各審査員が説明。

意見を交わしながら、“二次審査進出決定”、 “一次審査落ち”、 “保留”の3つに分類。

保留の中から二次審査に進めたい応募者を投票し、過半数を獲得した者が二次審査進出決定となった。過半数に満たない応募者については、また1名ずつ審議を実施。

最終的には、事務局の方針である「選出者内でジャンルやテーマのバランスは取らず、純粋に上位から順に決定する」ことを踏まえ、20名を決定。

 

ディスカッション時に評価ポイントとして出た意見は、「コンセプトや表現手法として新しさを感じられる応募者を推したい。」、「過去から継続して表現を探っている様子が見受けられている点を評価したい。」、「コンセプトおよびコンセプトを形にする手法が確立されている応募者の作品は目を引く。」などである。

 

一方、評価されにくいものとして、「他の場所で展示した内容をそのまま持ってきている応募者は、BUG Art Awardで勝負するぞ!という気持ちが感じられない。」「既に熟練し、他のスペースや機会でも取り上げられそうな応募者は、わざわざBUG Art Awardで選出する必要がないように思う。他で日の目を見ないような応募者を積極的に選出していきたい。」という意見が上がった。

二次審査

(2023/9/22  公開)

(1)応募者と審査員が対面で審査(BUGにて開催)

8/20(日)10:30〜18:00、セミファイナリスト20名(組)が、審査員5名全員と一対一で話す対面審査を実施。

一応募者あたりの時間は10分間で、応募者による展示プランと作品についてのプレゼンテーション、および、審査員からの質疑を行った。

 

二次審査では、応募者が審査内で説明を行った内容のうち、ファイナリスト展のプランと作品を主な評価材料とした。審査員は各々、決められた審査項目に対して点数をつけた上で、“ファイナリストに選出したい6名”に○を付ける方法で評価した。

(2)審査員5名によるディスカッション(BUGにて開催)

8/21(月)10:00~16:00、前日に審査員各自が評価した内容を踏まえて、審査員全員でディスカッションを行い、ファイナリスト6名を選出。

ディスカッションのサマリ

審査員には、審査員5名の評価を集計した表を配布。集計表は、“ファイナリストに選出したい6名”として多く○が付いた順で記載。○の数が同じ場合は、その中で点数が高い順に配列した。

審査の冒頭でディスカッションの進め方を確認。○5つの応募者は1名、○3つは1名、○2つは8名、○1つは6名であった。その中で、○2つまでの10名はディスカッションの俎上に載せることが決定。

○が1つの6名に対しては、その中から審査員各々が特にディスカッションしたい応募者を選出し、最終的には12名がディスカッション対象となった。

 

まずは○の数が多い順に取り上げ、各審査員が評価点について意見を出し合った。一通り意見が出た後、改めて各審査員がファイナリストとして選出したい応募者を3名ずつ挙げて投票を行った。

投票後、○が一つ以上ついた応募者に対して、再度ディスカッションを行った。ここでは、「BUG Art Awardが発展のための機会になり得るだろうか?」、「今後もこのテーマを続けていく意志が窺えるか」、「選択しているメディウムや作品のサイズ、空間構成などが表現したいことに合っているか」、「鑑賞という行為や体験について考え抜かれているか」、「表現に独自性があるか」といった観点から、審査基準を含めてディスカッションが展開された。その後、2回の投票とディスカッションを繰り返し、最終的にファイナリスト6名が決定した。

 

ディスカッション時に評価ポイントとして出た意見は、「表現することやテーマに強い執着が見られる。」、「作品と対峙する人への影響をよく考えられている。」、「現在のスタイルだけで固まらず、今後も展開していく可能性を感じる。」などであった。

 

一方で、評価されにくいものとしては、「応募者にとって、またBUG Art Awardという機会に対して、プランの必然性を強く感じない。」、「テーマが魅力的であっても、あまりにファイナリスト展のプラン、作品の内容が決まっていない場合、判断材料不足で評価し得ない。」、「既存の技法、展示方法への批判的検討が足りないと思われる。」、「応募者が説明してくれた作品の特徴が写真(PDF書類)からは分かりかねる。特にテクスチャーが特徴である場合は、作品現物を見せてほしい。それが難しい場合は、特徴の伝わる資料を用意してほしかった。」という意見が上げられた。