株式会社リクルートホールディングスが運営するBUGでは、インディペンデントキュレーターの長谷川新をキュレーターに迎え、2024年5月8日(水)より、「陸路(スピルオーバー#1)」を開催します。
2023年9月にオープンしたBUGは、「この世界に、バグを。」をキーメッセージに、アーティストやアートワーカー*が全力で挑戦できる機会と場所を提供することを活動の軸としています。
BUGのコンセプト設計にあたり、私たちは、これまで実際にアートの現場で活動してきた長谷川と共に、アーティストやアートワーカーを取り巻く環境について2年以上にわたり議論を重ねてきました。その成果はBUGの活動方針にも反映されています。

本展では、想定された範囲を超えて電波が届くスピルオーバー現象から着想を得て、林修平、MES、FAQ?の3組が、長谷川のキュレーションによって新作を発表します。BUGの5本目となる本展は、2023年1月頃から企画の構想が始まりました。長谷川との協働により、「挑戦の機会」を創出する場としての更なる可能性を探ります。

 

*美術館やギャラリー、あるいはフリーランスでアートに関わる仕事をされている方。

キュレーターコメント

いわゆる「電波漏れ」を意味するスピルオーバーは、その性質上、本来届けるはずの範囲を越境して、別の土地、地域、国家、人へと電波が届く現象を指す言葉です。行政権力や企業がどれほど労力を費やしても、電波は意に介さず国境を超え、地方区分を逸脱し、「受益者」の範囲を広げ続けます。 想定されていなかった情報を受け取ってしまった者たちがこの世界にはそれなりにたくさんいるはずです。逆に言えば、「サブスク(定額料金制)」や「地デジ化(アナログ放送の廃止)」といったものは、料金を払った者と払っていない者に選り分け、分割線を明確にし、文化(商品)の受け渡しを厳密に管理するという欲望に他なりません。しかしそれでも、完璧な管理など存在しないし、スピルオーバーがなくなることはない。

 

この企画は、スピルオーバーという現象をベースにして、継続的に発表を続けていく予定です。「陸路(スピルオーバー#1)」は、その最初の試みとして、 アートセンターBUGにおいて、林修平、MES(新井健・谷川果菜絵によるアーティストユニット)、FAQ?(谷川果菜絵・小宮りさ麻吏奈によるプラットフォーム) という、一人・一組・一プラットフォームの実践を展開します。「陸路」は「episode1 陸路」くらいの気持ちでつけています。

 

企画者としては、この世界では絶えずスピルオーバーが起きてきたし、今後も起きていくということを信じていますが、それは奇跡的なことというよりは、 明日も太陽は昇るだろう、くらいの当たり前なこととして信じています。また、ほとんどの「電波」は誰にも届くことなく霧散しているし、届いたとしても概ねコントロール下に置かれて牙を抜かれているし、そもそも表現や文化の享受どころではない状況がありますが、それについては憂うのではなく実行すべきことです。

 

メインビジュアルはスピルオーバーが発生している世界をデザイナーのKaiが表現したものです。今日もどこかでスピルオーバーが起きているこの世界で、 林修平、MES、FAQ?それぞれの足取りを目撃してもらえたらと思います。

 

撮影:黑田菜月

長谷川 新/Arata HASEGAWA
インディペンデントキュレーター

インディペンデントキュレーター。主な企画に「クロニクル、クロニクル!」(2016-17)、「不純物と免疫」(2017-18)、「グランリバース」(2019-)、「αM Project 2020-2021 約束の凝集」(2020-21)、反戦展(2022-)、「奈良・町家の芸術祭はならぁと2023 宇陀松山エリア SEASON2」(2023)など。「日本戦後美術」を再検討する「イザナギと呼ばれた時代の美術」を不定期連載中(Tokyo Art Beat)。翻訳にジュリア・ブライアン=ウィルソン著 『アートワーカーズ – 制作と労働をめぐる芸術家たちの社会実践』(高橋沙也葉・松本理沙・武澤里映・長谷川新の共訳、フィルムアート社、2024年)。 

見どころ
高密度な作品体験

本展では、数字や量には還元されない物理的な経験を重視しています。キュレーターの長谷川は「展覧会に可能性がまだあるとすればそのような質を手放さないことだ」と考え、アーティストたちもまた、鑑賞する前と後では鑑賞者が変わってしまいうるような、高密度な作品を制作しています。

アーティストの新作を展示

参加アーティストはそれぞれ、これまでの実践を引き継ぎながら新たな試みに挑戦しています。

林修平は、爬虫類や両生類の飼育経験を踏まえ、私たちの身体を取り巻く法律、条例、慣習などの諸規範の矛盾を露呈させる作品を発表してきました。今回は、動物の「駆除」に端を発する言説に関して、デスボイスによるレクチャーパフォーマンス形式の作品を発表します。

MESはこれまでも光や熱を用いた可変的素材によるインスタレーション、パフォーマンス、映像作品を発表してきました。近作《GA-I》においては、資本経済や画一化された循環のなかにありながらも、動物と人間が個別に関わり、その死を弔うという営みを汲み出そうと試みています。今回発表する作品も、こうしたMESふたりの継続的な問題意識と実践のなかで制作された新作です。

FAQ?は、交換日記を起点として、性や生、抵抗について取り組んできた人々にまつわる上映やトークを行ってきました。今回の展示では、そうした活動を通して考えてきたことなどを、初めて新聞型のZINEとして制作・発表予定です。

毎週水曜は20時までのナイト開館!

好評いただいていたナイト開館(20時までの延長開館)を引き続き実施します。

ナイト開館日: 5月8日、15日、22日、29日、6月5日、12日

陸路(スピルオーバー#1) 予告動画

展覧会に先立って、参加アーティストの林修平さん、MES、FAQ? の紹介動画をお届けします!

動画編集: 斎藤玲児

題字:Kai

林修平

アーカイブ:

・「D.L.P.#2」(撮影・作曲:宮崎竜成)

・「たかが台、されど体温」(撮影:吉川永祐)

・「衛生(God Complex)」(撮影:永田康祐)

・「帝國水槽」(撮影:守屋友樹)

・「spoil(er)」(撮影:宮崎竜成)

MES

アーカイブ:

パフォーマンス<WAX P-LA/RE-Y>@Qipo 2024、メキシコシティ(撮影:吉田山)

FAQ?

アーカイブ:

・交換日記 ・「熟睡、東京編」スクリーニング@5thfloor

・「CYBER FEMINISM GATHERING」@BuoY (撮影:eetee)

・ayaka ura 「集まりを考えるためのドローイング」

開催情報
参加アーティスト

林修平、MES、FAQ?

会期

2024年5月8日(水) – 2024年6月16日(日)

時間

11:00 – 19:00
※水曜のみ20:00まで開館

休館日

火曜

入場料

無料

主催

BUG

林 修平/Shuhei HAYASHI
アーティスト

1993年生まれ。愛知県在住。

爬虫類や両生類の飼育経験を基に、身体を取り巻く諸規範の矛盾を露呈させたり、生態系の循環システムに人間を組み込む方法を考えたりしている。2020年から住所非公開スペース「IN SITU」の運営にも携わっている。

主な展覧会に「D.L.P.」(箔一ビル / 2023)、「神(analyzer)(IN SITU / 2023)、「DAZZLER」(京都芸術センター / 2022)、「群馬青年ビエンナーレ2021」(群馬県立近代美術館 / 2021)など。

撮影:遠藤文香

MES

MESは、彫刻や空間芸術にバックグラウンドを持つ新井健(あらい・たける)と、文芸、演劇にルーツのある谷川果菜絵(たにかわ・かなえ)の二人がインディペンデントに企画・制作するアーティストデュオ。2015年に東京芸術大学にて結成、東京を拠点に活動する。

 

 現代美術とクラブカルチャーという親しく不可分な領域の境界から都市や社会の変化を見つめ、19世紀から現在まで通底する社会問題に向き合い制作を重ねている。これまで光や熱の性質を利用したインスタレーションやパフォーマンスを発表、国会議事堂にアプローチした〈DISTANCE OF RESISTANCE 抵抗の距離〉、他者との隔たりを熱の運動で描いていく〈サイ/SA-I〉に見られる、レーザーやサーモグラフィなどのテクノロジーと、蓄光素材や蝋燭、身体とテキストといった可変的な素材を組み合わせたスタイルを特色とする。 

現在まで、レーザーアニメーションを使用したVJパフォーマーとしても活躍し、音楽ジャンルを問わずサウンドアーティストやDJ等とコラボレートし舞台演出を担っている。近年はパーティー「REVOLIC -revolution holic / 革命中毒-」のオーガナイズ実践も行う。

FAQ?

F…figure, feminism, feeling…?  

A…art, alternative, affirmative…?  

Q…queer, questioning, qualia…? ​ 

 

その周辺、その時の関心や疑問をトピックとした記述を書き綴る、エッセイのようなコラムのような、とりとめもない交換日記から始めるネットワーク。 谷川果菜絵(MES、NEON BOOK CLUB)と小宮りさ麻吏奈の2人によって2021年に始動。 交換日記のほか、イベントや企画なども行う。